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第97回「問題の商標出願について思うこと」

  • 2月の執筆者はチーフアドバイザー(知財)桑原良弘です。

    「問題の商標出願について思うこと」

    2017年1月26日  livedoorトピックニュースによれば、「PPAP」を商標出願した男性がフジテレビの直撃取材に「正当な競争」と主張、として、話題になっているピコ太郎の「ペンパイナップルアップルペン」に関して報道している。

    26日放送の「とくダネ!」(フジテレビ系)では、「PPAP」を商標出願した男性を直撃取材した。男性は元弁理士で、毎日、テレビや新聞をチェックし、そこで選んだ言葉を特許庁に出願しているという。1日50件ほど出願することもあるとか。
    去年の出願数は、男性と男性の会社の出願件数だけで、日本全体の約1割を占めているとも明かす。

    ピコ太郎やCDの発売元のエイベックスとは「今のところは関係はありません」という。そして「文字」がメディアに出ると「社会の共有財産」になり、誰のものという概念はなくなると主張。また商標には人のものを盗む「冒認」という概念がないことも指摘した。
    商標登録は出願から審査までに半年かかり、そこから登録までに半年から1年程度かかる。
    男性は出願から審査開始までの半年の間に、商標や使用権を他社と交渉しているという。その商標の売買と使用権の許諾で利益を得ることをビジネスモデルにしているとし、男性は「正当な競争」を行っていると主張していた。

    読者の方々はどのように考えるだろうか。
    ビジネスは知財とともに、というキーワードで私のシリーズは統一しているが、この両刃の剣ともいえる知的財産権はどうにもやりきれないことがあることを知っておきたい。

    法的には正当な競争であるが、あとだしじゃんけんであり、商標法の精神ともいえる第1条に書かれている「この法律は、商標を保護することにより、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もつて産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護することを目的とする。」を冒涜する行為ではないだろうか。
    本件の場合、業務上の信用は創作者にあるのに、利益は全く別の人が得るというように感じるのは私だけではないと思う。

    商標が登録となる審査要件に、(1)申請した商標を使った商品、サービスなどが実現する可能性が低い(2)他人が許可なく著名な名称で出願する(3)「五輪」のような公共性の高い名称を出願する−などに該当すると判断されたりした場合、登録が認められない、といった規定はある。
    しかしながら、原則は商標は早く出願した者が権利を得ることができるのであり、創作者であるからといって権利を争うことは難しいことがある。

    それではどう対処していくか。
    ビジネス的な事例としてキャラクターグッズ、例えば仮面ライダーなどヒーローについては、1年くらい前に関連する指定区分(玩具、せっけん類、お菓子など)で商標出願がされ、作品が放送される前には当然ながら準備は済んでいる。
    前もって事業展開を考えたときにどう対処していくか。商標は事業においては即効性が高いといえるので、なおさら留意が必要となる。
    とはいえ、PPAPのようにネットから話題が広がっていった作品では何とも言い難いが、もしピコ太郎さんやその周辺の方がいち早く知的財産戦略を踏まえた計画をしていたならば、そのビジネス戦略は優れたといえるだろう(エイベックスはPPAPで出願はしているが、問題の男性より後となっている)。

    一つの対処案として、弁理士や知財アドバイザーなどの専門家と知的財産のビジネス活用について聞く機会を、少なくとも年に1回くらい持っておくと、事業戦略を考えるときのリスクに備えられると考える。

    ここで、近く開催される注目の知財セミナー情報を提供する。ぜひ参加されるとよい。
    前回紹介した優れた知的財産(特許・商標・意匠)を活用している企業にと、その技術にスポットを当てたテレビ番組『PATやってみた!』
    番組出演した企業よる知的財産戦略や技術の横展開を考えるパネルディスカッションとマッチング、弁理士によるビジネスに直結した知的財産権(特許・商標・意匠等)について事例紹介などを踏まえ有用な情報提供を目的とするセミナーである。

    今回の話題とするPPAPに関する対処方法などさらに詳しい考え方、知財の活かし方などを理解を深める絶好の機会になるのでは。

    「知財ビジネスマッチングセミナー&情報交換会」

    2017年2月16日(木曜) 15時〜 広島市内 オリエンタルホテルにて開催

    http://www.jpaa-chugoku.jp/0216seminarimg.php(新規ウィンドウに表示)

    主催:日本弁理士会 後援:中国経済産業局 中国地域ニュービジネス協議会、広島県発明協会、各地域金融機関

    ビジネスは知財とともに。

    チーフアドバイザー(知財) 桑原 良弘

     ※このコラムは2017年2月1日に配信されたメルマガ「広島校だより Vol.125」に掲載されたコラムです。メルマガ「広島校だより」を配信希望の方は、広島校だより(PDF:306.0KB)からお申込みください。