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第93回「雨粒の話」

  • 10月の執筆者はコーディネーター(ものづくり)大村卓一です。

    「雨粒の話」

    それまで降っていたのがうそのように急激に雨雲が消えて日が差し込んできたとき、大野の山並みを背景にくっきりとした虹が出ていました。虹の出ている区域は明るいのですがまだその区域は雨が落ちていたのでしょう。熱く湿った空気の中だったのですが、明るい気分になりました。

    虹の正体は雨粒が作るカーテンに投影された画像なのか? 特定の雨粒が作る点描像なのか?

    前者はアナログ映像の、後者はTVなどのデジタル画像の仕組みに対応します。アナログ画像はフィルムなどに縮小した原画を高輝度光源で引き延ばしスクリーンに投影したものです。後者はFPDのように画面内に配置した数百〜数千万画素を電子制御して作る像です。

    長い間、前者、即ち、虹のアーチの中心部付近にある水がプリズムの役割をして、太陽光を分光し全方位に放射された7色の光線がまだ降りやんでいない地域の雨のスクリーンに当って作っているのだろうと考えていました。しかし、プリズムの役割をする水の場所とその大きさの点で解決できない矛盾が大きいのでこの仮説は成り立ちそうにありません。そうするとこの虹の発生メカニズムは後者ということになります。 

    虹は太陽を背にしなければ見えないこと、出ている間は虹の空間的な位置と7色の配置は固定されていること、を条件にあれこれ考えてみました。見えていることを基に確からしい情報を要約すると、遠方の雨粒は空から落ちてきて、虹の領域に入るとまず赤色に、少し落下すると橙色に、最後に紫色に発色し、虹の領域を超えると背景の邪魔をしないように姿を消す。(脱線しますが、存在するのだけれど見えないというのは水や空気の特権のようでいいですね。)
    太陽と雨粒と観察者の位置関係が大きく関係しているだろうということは理解できましたが、その先はギブアップし文献に頼りました。

     デカルトが発生のメカニズムを、そしてニュートンが7色の構成を解明したそうです。要約すると、太陽光は雨粒内に入射すると屈折、反射を繰り返したのち出射しますが、太陽光-雨粒-観察者間の角度が特定値で光の強度が極大を示します。その特定角は波長に依存しているので、虹が観察されるという説明です。太陽光-雨粒-観察者間の角度が42.36から40.67度の範囲(虹の帯の幅の見込み角が1.69度ということ)に、屈折率の順番に外周が赤い帯、内周は紫の帯、すなわち虹、が観察されるという訳です。雨粒の中で2度反射して観察者方向に戻ってきた光線によって形成されるので太陽光を背に観察されます。

    では実際の虹はどのくらいの雨粒が関与しているのか見積ってみましょう。
    冒頭の例で当たってみます。虹の頂点は背景の山より低く、その山は観察した場所から1.5キロメートル位のところにある標高約500メートルの経小屋山でした。虹はその範囲に形成されているので、観察者の私から1000メートルの位置に半径300メートルの大きさであったと仮定します。1000メートル先の赤から紫までの虹の帯の幅の見込みは角1.69度ですから、虹の幅は約30メートル、この間に7色あるのですから赤色の帯幅は約4メートルとなります。
    雨粒の空間密度10−1000個/立方メートルを代入すると、4メートル立方体の中の雨粒は640−64000になります。雨粒全体が一つの色になっているわけではなく雨粒の中の特定の行路を通ってきた光だけが見えています。人間の目の明るさに対する識別感度は5%程度と云われていますので、赤色の光が雨粒内を通過する行路幅はそのオーダであることが推察されます。 

    虹と同じくらいの程度でぼんやりと現象を何とか半定量的に把握できたようです。太陽光の強度、雨粒の密度、雨粒サイズと形状、サイズの分布状況などが絡んで発生条件を満たしたとき虹は見えてくるのです。虹の鮮明度もこれらの因子が関わっているはずです。

    いろいろ調べて理解度は進んだのですが、それ以上に疑問も膨らんできました。
    水は難問も提供してくれますが、形や大きさや量を変え私たちの生活にかかわってくれています。この水の惑星にいる恩恵をしっかり認識し、生かしてゆけるよう心掛けたいと思います。

    ものづくり支援コーディネータ 大村卓一

     ※このコラムは2016年10月5日に配信されたメルマガ「広島校だより Vol.121」に掲載されたコラムです。メルマガ「広島校だより」を配信希望の方は、広島校だよりからお申込みください。