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第90回「梅干し」

  • 7月の執筆者はコーディネーター(ものづくり)大村卓一です。

    「梅干し」

    この原稿を書いているこの季節、昔からご近所さんから梅を沢山頂きます。
    梅干しを作っていますが、昨年減塩梅干しに挑戦し失敗しました。
    漬けてから10日くらい経過してカメを見ると液面上の梅の表面にカビが発生していたのです。
    それまで15%くらいの食塩で漬けていたのですが、高血圧が気になるので8%の減塩に挑戦した結果がこれでした。

    梅干しには抗菌性があるはずなのになぜ?

    この経験を踏まえ、1年かけて(?)仮説を立て対策案を練りました。

    1.カビの原因菌は梅の表面に付着している

    2.食塩は梅の果肉や菌を構成している水分を吸い出し、梅は脱水し、菌は食塩濃度5%以上の水溶液で失活する
     (食塩濃度が約3%の海水の中では腐りにくいことを根拠にし、少し下駄をはかせました)

    3.梅の果肉から吸い出された水分は食塩を溶解し(クエン酸も含む)、5%以上の食塩濃度となって梅の表面を広がり、抗菌層を形成してゆく

    4.梅に塩をまぶした時点から食塩水の広がりと菌の繁殖は競争する 食塩が行き渡っていない部分は菌が繁殖しコロニーを作って顕在化する

    仕込んだ時の状況を分析します。

    食塩の比重は2.17ですから重量比15%は体積比に直すと8%弱になります。塩粒の大きさを5mm角とすると、約30cc位(直径約4cm)の梅一粒に約15粒が付着します。
    表面積が約50平方センチメートルですから3平方センチメートルに5mm角の食塩が一粒付着しているという状態です。一昨年まではこの状況から菌の繁殖と食塩水の広がりの陣取り合戦を繰り広げるのですが、菌のコロニーが顕在化せずに梅漬けは成功していました。昨年は減塩しました。梅漬けの時期は同じですから菌の繁殖速度は同じはずだった。
    また、食塩量は半減しましたがカビの原因菌が付着している面積が拡大したわけではありません。この状況で、カビの発生をなくすには食塩水の広がり速度を2倍早くしてやらなければならなかった、ということになります。

    減塩しているのに食塩水の広がり速度を早くすることはできるのか?

    分析結果を踏まえ、今年は次のような取り組みをしました。

    梅の表面積当りに分散させている食塩粒の数が少ないけれど食塩水の広がり速度を早めるための方策として、果肉から浸透圧によって吸い出された水をカメ全体に循環させてみました。頻繁にカメをゆする操作を行いました。梅の表面に接触している部分の食塩濃度を高くしておけば浸透圧によって吸い出されてくる水の量は多くなるはずですから。

    梅漬けの初期のころ、梅の表面の濃度は高いのですが浸みだしてくる水の量も多いので食塩濃度はすぐ低下します。食塩水の広がり速度が低下するということになります。そこで、カメをゆすることによって、未溶解の食塩を早く溶かして梅の実の表面付近の食塩濃度が高濃度に保たれるようにしようという目論見です。

    ここでは余談になりますが、漬ける前に我が家では梅をアルコール濃度が一番高い、即ち除菌効果の高いブランデーに浸し除菌します。食べるときまで香りが残っているように感じています。

    梅漬けしてそろそろ3週間になりますが、カビは見られません。
    仮説の検証が出来たと思っています。

    漬ける量が大きくなるとカメは大きくなり操作が難しくなりますので、もっとスマートな方法はないかと、漬物の得意な先輩に相談しました。
    彼は食塩を白菜にまぶすのではなく、その濃度の食塩水に漬け込みます。カビの発生の心配は全くないと云ってます。
    同じ方法で梅漬けもできるはずです。来年はこの方法を一部取り入れようと考えています。
    1年後になりますが、ご希望の方には結果を報告します。

    ご参考

    あまり参考書を読まず自己流でやっていたのですがこの記事を執筆するにあたり調べてみると、

    ○梅干しの種類としては、伝統的製法によって製造された梅干しを「梅干」、調味されたものを「調味梅干」と表示するようJAS法で義務付けられている。5訂日本食品標準成分表によれば、塩分は梅干が22.1%、調味梅干が7.6%となっている。

    ○梅を塩漬けにした後3日ほど日干しにする。これを「土用干し」という。この状態のものを「白干し」と呼び、これは保存性に優れており、塩分が20%前後となる。土用干しののち本漬けしたものが伝統的な梅干しである。

    ○近年市販されている梅干しは、減塩調味を施したものが多く、これらは商品のラベルに「調味梅干」と記載されている。これは、白干しのものを水につけ、塩分を減少させ味付けをしたものである。

    などの情報が出てきました。
    (参考資料:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A2%85%E5%B9%B2%E3%81%97)(新規ウィンドウに表示)

    ものづくり支援コーディネーター 大村卓一

    ※このコラムは2016年7月6日に配信されたメルマガ「広島校だより Vol.118」に掲載されたコラムです。メルマガ「広島校だより」を配信希望の方は、広島校だよりからお申込みください。