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第89回「還暦と甲子園」

  • 6月の執筆者はチーフアドバイザー「技術」山本茂之です。

    「還暦と甲子園」

    言うまでもなく、プロ野球はセリーグ6球団、パリーグ6球団でペナントレースが行われています。各球団の専用球場(本拠地)は、以下のようになっています。
    (球団名:専用球場名、施設命名権による球場名、施設命名権取得者、球場所有者(括弧内は管理・運用者)の順に記載)

    ●セリーグ

    1.東京ヤクルトスワロ−ズ: 明治神宮野球場、なし、なし、宗教法人明治神宮

    2.読売ジャイアンツ: 東京ドーム、なし、なし、(株)東京ドーム

    3.阪神タイガース: 阪神甲子園球場、なし、複数企業(オフィシャルスポンサー制度)、阪神電気鉄道(株)

    4.広島東洋カープ: 広島市民球場、MAZDA Zoom-Zoomスタジアム広島、マツダ(株)、広島市((株)広島東洋カープ)

    5.中日ドラゴンズ: ナゴヤドーム、なし、なし、(株)ナゴヤドーム

    6.横浜DeNAベイスターズ: 横浜スタジアム、なし、なし、横浜市及び国((株)横浜スタジアム)

    ●パリーグ

    1.福岡ソフトバンクホークス: 福岡ドーム、福岡ヤフオク!ドーム、ヤフー(株)、福岡ソフトバンクホークス(株)

    2.北海道日本ハムファイターズ: 札幌ドーム、なし、なし、札幌市((株)札幌ドーム))

    3.千葉ロッテマリーンズ: 千葉マリンスタジアム、QVCマリーンフィールド、(株)QVCジャパン、千葉市((株)千葉ロッテマリーンズ)

    4.埼玉西武ライオンズ: 西武ドーム、西武プリンスドーム、(株)プリンスホテル、西武鉄道(株)((株)西武ライオンズ)

    5.オリックス・バファローズ: 大阪ドーム、京セラドーム大阪、京セラ(株)、オリックス(株)グループ

    6.東北楽天ゴールデンイーグルス: 宮城球場、楽天Koboスタジアム宮城、楽天(株)、宮城県((株)楽天野球団)

    これらを見て分かるように、市や県が所有している五つの球場のうち、三つの球場は、昨今のネーミングライツが使われて、愛称で呼ばれており、自治体の収入の一部に貢献しています。一方、所有者が民間企業の球場でも、ネーミングライツが使われている例と、使われていない例とが混在しています。

    球場名は、その球場が立地しているご当地の名前が付いているものがほとんどですが、阪神甲子園球場だけは、ご当地の名前になっていません。明治神宮野球場も正確には地名ではありませんが、所有者の明治神宮の名前が付されているので、所在地は、その近くにあるであろうことは、大よその見当がつきます。

    ところで、日本では、人生の節目に長寿のお祝いをする習慣があります。還暦(数え年61歳)、古希(70歳)、喜寿(77歳)、傘寿(80歳)、米寿(88歳)、卒寿(90歳)、白寿(99歳)、百寿(100歳)等が、そうです。これらのうち、還暦を除くお祝いは、全て、数え年でその年齢になった時(満年齢で言えば数え年から1年を引いた歳)にするものです。

    一方、還暦は、他の長寿祝いとは少し違った意味合いがあります。数え年で61歳、満年齢で60歳の時に祝うのですが、十干十二支の二つの暦が繰り返され、60年経って生まれた年と同じ暦に戻った、と言う意味で還暦と言われます。今は、人生80数年が平均的ですが、昔は、同じ暦に戻るほど長生きしましたね、の意味を持っていた訳です。

    十干は、「甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸」の10個の要素からなる10年周期の暦です。これは、万物は、「木・火・土・金・水」の5種類の元素から構成されるという哲学思想、いわゆる五行説の五行に要素二つずつを当てはめ、さらにその各元素に陰陽(日本では陽を兄(え)、陰を弟(と))を当てはめたものです(陰陽五行説)。例えば、「甲」は「木の兄(きのえ)」、「乙」は「木の弟(きのと)」、「丙」は「火の兄(ひのえ)」、「丁」は「火の弟(ひのと)」になります。以下、同様です。

    一方、十二支は、「子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥」の12個の要素からなる12年周期の暦です。昨今では、「今年は申(さる)年」、「私は午(うま)年の生まれ」等と使われているように、こちらの方が、馴染みがあります。

    十干十二支を合わせたものを干支(えと)と言い、10年周期の十干と12年周期の十二支とは、10と12の最小公倍数である60年が経つと、両暦とも同じ暦に戻ることになります。これが、上述した還暦です。「えと」は、元々は十干を「ひのえ」、「ひのと」のように、兄(え)と弟(と)の二つにして訓読したことから来ていますが、現在では、「あなたの生まれ年の「えと」は何ですか」、「去年の「えと」は未(ひつじ)でしたね」等のように、むしろ十二支を指す言葉として使われていることが多いようです。

    十干十二支それぞれの、要素の最初の組み合わせは「甲子(きのえね、こうし)」であり、60年に一度の縁起の良い、両暦の最初の年ということになります。阪神甲子園球場は、「甲子」の年である1924年に完成しました。それで、「甲子園」という縁起の良い、かつ覚えやすく書きやすいネーミングになっています。その当時の地名を球場名に付けなかったのが奥深い。ただし、完成した当初の名称は、「甲子園大運動場」であり、次に「甲子園球場」と改称され、現在の名称は1964年から使われるようになっています。

     阪神甲子園球場の所在地は、兵庫県西宮市甲子園町1-82ですが、球場が完成した当時は兵庫県武庫郡鳴尾村であり、現在の町名である甲子園町は、球場や周囲の発展とともに後から付けられたものです。要するに、最初に球場ありき、町名は後付け、でした。

    「甲子」の年は60年に一度やってきます。阪神甲子園球場の2回目の還暦は、2044年です。西暦年を60で割って余りが4となる年が、「甲子」の年です。

    十干十二支の組み合わせは60種類ありますが、そのうち、「壬申の乱」(672年、古代日本最大の内乱)、「戊辰戦争」(1868年─1869年、旧幕府勢力と新政府軍の間の一連の内戦)等に、その言葉を見ることが出来ます。また、広島地区の方なら、「庚午北・庚午中・庚午南」の町名をご存じだと思いますが、これは、この地区が「庚午」の年の1870年に干拓工事により整備されて「庚午新開」となり、1933年に「庚午町」、1967年から現町名になったものです。十干十二支は、その出来事が起こった年に因んで使われている例が多い。

    八百屋お七の話に始まるとされている「丙午(ひのえうま、へいご)」に関わる迷信が、科学技術が進んだ近年でも根強く残っていたことを、人口統計の中で見ることが出来ます。直近の「丙午」は1966年でしたが、その前年1965年の出生数が182.37万人だったものが、「丙午」の1966年には136.09万人と激減し(前年比25.4%の減)、翌年1967年にはまた193.56万人と急激にV字回復した記録が残っています。

    次の「丙午」は、10年後の2026年にやってきます。今後、健康を維持して、この年の出生数がどうなるかを、興味深く見守るとともに、還暦の後にやってくるその他の長寿の祝いを、出来るだけ多く享受したいと思っています。

    チーフアドバイザー(技術)山本茂之

    ※このコラムは2016年6月1日に配信されたメルマガ「広島校だより Vol.117」に掲載されたコラムです。メルマガ「広島校だより」を配信希望の方は、広島校だよりからお申込みください。