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第86回「縦長と横長」

  • 3月の執筆者はチーフアドバイザー(技術)山本茂之です。

    「縦長と横長」

    カタログ、パンフレット、折込みチラシ等、世の中にはいろいろなサイズの用紙が氾濫しています。2月の今は、確定申告の真最中ですが、源泉徴収票のサイズもいろいろで、纏めにくいですね。整然とファイルしないと気がすまないであろうA型人間の人なら、その整理の仕方で頭を悩ますのではないでしょうか。

    以前の日本の官公庁では、用紙としてB系列のものが多く使われていましたが、国際化とIT化が一段と進んだ現在では、ほとんどがA系列の用紙になってきているのではないでしょうか。A系列化は、ご多分に漏れず、学協会誌においても然りで、今はほとんどがA4サイズです。

    ところで、これらのドキュメントの情報を複写する最近のコピー機は、ずいぶんと様々な機能を備えています。めったにコピーしないオジサンは別として、毎日コピーしている、あるいはコピーさせられているかもしれない皆さんは、これらの機能を十分に使い切っていらっしゃいますか。

    コピー時によく使う機能の一つに、「拡大」と「縮小」があります。以前、B5サイズのバックナンバーの論文を、A4サイズによく拡大コピーしたものです。また、A4サイズに打ち出されたExcelの小さい文字・数字の一覧表を、老眼の人にも見えやすくするために、A4→A3に拡大コピーすることもよくあります。

    用紙サイズの表示が出ない昔のコピー機なら、前者のB5→A4の時には115%を、後者のA4→A3の時には141%の、何かすっきりしない拡大率を入力してコピーしていたものです。今は「B5→A4」や「A4→A3」の表示が出ますので、誰も拡大率の数字など気にも留めません。

    A系列の用紙でも、B系列でも、規格化された用紙では、実は「タテ」と「ヨコ」には、厳密な数学的関係があります。その前に言うまでもないことですが、一例として、A3サイズを半分に折りたたんだものがA4サイズと決められていますので、念のため。A4をさらに折りたたんだのがA5です。大きなものを半分に折りたたんだ時、それが折りたたむ前の用紙と「相似」な形になっていないと、折りたたみを進めて行くうちに用紙の体をなさなくなってしまいます。正方形で考えてみると、このことが直ぐに分かります。そのようにならないためには、中学生レベルの数学を使って、「タテの長さa」と「ヨコの長さb」には、a:b = 21/2:1の関係がなければいけないことがわかります。例えば、A4サイズの「タテ」と「ヨコ」の長さの絶対値は、それぞれ297mmと210mmですが、確かに297÷210≒1.41≒21/2となっていることがわかります。先ほどのコピーの拡大率は、まさにこの値です。

    用紙は縦長をイメージすることが多いのですが、「タテ」と「ヨコ」は入れ替えても「ヨコ」と「タテ」になるだけですから、これから後は横長で考えましょう。
    このa:b = 1:21/2の比を「白銀比」と言います。おおよそ、a:b ≒ 5:7と考えても良い。長方形のそれぞれの辺が白銀比になっているようなものを白銀長方形と言います。今の中学校では白銀比について教えているそうですが、50数年前に中学生だった私のメモリーには、全く残っていません。その当時、用紙(恐らくB系列)はありましたが、コピー機はなかった。要するに、用紙は正確な白銀長方形になっています。

    白銀比は「銀メダル」ですから、「金メダル」もありそうです。「金メダル」は同じ論理で、「黄金比」ということになります。この言葉は、皆さんも今までに聞かれたことがあると思います。線分を a、bの長さで 2 つに分割するときに、a :b =  b :( a + b ) が成り立つように分割したときの比 a : b が黄金比になります。
    この比の値は x2 = x + 1 の方程式の解であり、a:b = 1:( 1 + 51/2 )/2となります。これは、おおよそa:b ≒1:1.618≒ 5:8となります。

    黄金比を有する長方形が黄金長方形ですが、その長方形の中に短いほうの辺の長さで正方形を作ってそれを取り除くと,残った長方形もまた黄金比になっているという性質があり、このほうが黄金比を直感的に理解しやすいでしょう。黄金比は、正五角形の中や、古代ギリシャのパルテノン神殿などの歴史的建造物、美術品、準結晶などで見ることができます。また、生物の世界にも表れ、植物の葉の並び方、巻貝、ヒマワリの種、松ぼっくり、ツクシ等でも見つけることができます。

    正五角形の一辺と対角線とは、正確な黄金比になっています。また、正五角形の対角線は交わる対角線を黄金比に分けており、正五角形とその対角線の中には、多くの正確な黄金比の存在を見つけることができます。これが、ソロモンの星が美しい図形と言われる所以です。

    身の回りの物では、名刺の基本サイズは91×55mmですが、91/55=1.65で黄金比より少し多めにズレており、一方、信販などのカードサイズは85×54mmで、これも85/54=1.57で黄金比からは少し少なめにズレています。でも、いずれも黄金比に近い。

    ところで、毎日目にしているであろうテレビ画面やパソコン画面はどうでしょう。
    以前のテレビは4:3テレビと言いますが、4/3=1.33、最近のワイドテレビは16:9なので16/9=1.78で、いずれも黄金比からは大きくズレています。この原稿を書いているパソコンの画面は306×192mmで、306/192=1.59となり、黄金比に近い。もう一つ、デジカメの普及で、今はあまり使われなくなった35mmフィルムの画面サイズは36×24mmで、36/24=1.5の比となっており、黄金比と白銀比の中間に位置しています。
    一方、映画館では上映フィルムに応じてスクリーンの「タテ」と「ヨコ」を変身させて、柔軟に対応していますね。黄金比かどうかは、測れないのでわかりません。

    「銀メダル」と「金メダル」が出てきた訳ですから、当然「銅メダル」はどうなっているのでしょうか、ということになります。銀は白、金は黄、ならば銅は赤ということになるので、「赤銅比」は、ということになります。しかし、「赤銅比」という言葉は、どこにも見当たりません。

    市町村の平成の大合併の動きの中で、群馬県の2町、1村の合併で、「赤銅市」というネーミングが考えられたようですが、結局は実現せず、「みどり市」が誕生しました。
    銅公害のイメージを払拭する願いからのネーミングのようです。ただし、この場合は「しゃくどう市」と読むのではなく、「あかがね市」と読むことを考えたらしい。もう一つ。昔、「赤銅鈴之介」というテレビ番組がありましたが、これは「あかどう」で関係なし。おっと、間違うところでした。剣道の世界ですから、正しくは「赤胴鈴之介」でした。でも、これをもじった、「赤銅鈴之介」も存在しており、もっぱら温泉のブランドに係わる言葉として使われているようです。

    名刺交換で頂いた名刺を見ると、縦長で縦書きしたものと横長で横書きしたものがあります。名刺ホルダーに保存された情報を見るのに、横にしたり、縦にしたりして見なければいけない面倒くささを、皆さんも経験されていることと思います。また、会議や委員会、シンポジウム、フォーラムなどで名刺を名札ホルダーに入れて使う場合、ホルダーは横長型で使われることが多い。最近は名刺にE-mailアドレスを入れている人が多く、これも横長で横書きの方が大きな文字で入れやすい。今は、横長型の名刺が圧倒的に多くなっています。

    PowerPointによるプレゼンテーションも、横長型の投影スクリーンが多いこと、また、スライド作成の時、横長で横書きの方が、改行が少なくてすむこと、等の理由から横長型の表示で行われていることが多いようです。

    テレビ、映画、パソコンなどの映像・文字情報表示装置もほとんどが横長型です。そもそもこれらの表示装置に横長型が多いのは、我々の視野が横長型であること、生活空間が横広がりであり、上下方向の認知の機会が横よりは少ないことなどに起因していると考えられます。モバイルの代表格のスマホは、メニューやコンテンツに応じて、縦長にしたり、横長にしたりして、臨機応変に使い分けされています。

    一方、用紙ではどうでしょう。縦長で使用する場合と、横長の場合とがありますが、この場合は縦長が多いのではないでしょうか。その理由として、縦長で縦サイドを綴じた方が紙面をめくりやすい、書棚で保存しやすい、等が挙げられるでしょう。横長の場合は縦サイドを綴じた場合と、横サイドの上側を綴じた場合とが見受けられますが、いずれの場合も紙面をめくりながらの作業がしにくいですね。

    「タテ」と「ヨコ」の比率はアスペクト比とも言われますが、アスペクトとは、もともと様相、光景、顔つき等の意味があります。「モナリザ」は黄金比ですが、皆さんはどうでしょう。一度、測ってみられることをお勧めします。

    チーフアドバイザー(技術)山本茂之

    このコラムは2016年3月2日に配信されたメルマガ「広島校だより Vol.114」に掲載されたコラムです。メルマガ「広島校だより」を配信希望の方は、広島校だよりからお申込みください。