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第82回「知的財産からどうやって新商品・新事業を構築するか」

  • 11月の執筆者はチーフアドバイザー(知財)桑原良弘です。

    「知的財産からどうやって新商品・新事業を構築するか」

    企業の発展には自社にとっての新市場、新分野への展開は欠かせない。しかしながら、中小企業にとって自社だけで技術開発や商品開発を進めることは容易でない。多くの企業を訪問して企業と経営者を見る中で、技術力・商品力や強い顧客基盤を持ちながらなかなかそれをうまく活用できない企業は多い。とてももったいない。持ち得る技術と新たな技術の融合で新商品新事業を始めよう。

    その中の一つの戦略として、オープンイノベーションの考え方がある。特許技術は深読みすると面白いもので、アイデアはあるが実際のものづくりではなかなかできない。あるいはできてもコストがかかったり、時間がかかるということがある。オープンイノベーションの原点は『外部リソースを活用する』ことで新たな道を探り、短期間でそのアイデアの具現化、商品化を目指すものである。

    特許権者が持つ特許技術を見たとき、外部リソース側の立場 (多くは中小企業側となるが)において、どうすると良いビジネスになるか、成功のパターンを考えると、

    1.特許権者は特許はあるが製品まで開発できていない。そこで特許技術の製品を具体化できる企業を探していて、そこに提案する。もちろん、従来の取引先ならば部品の仕様や図面にした状態で発注が来るものであるが、特許明
    細書を参考に市場を見たとき、その会社の状況を読むことができれば、効果的なPRができる。

    2.特許権者が必要とされるであろう技術を想定して、自社の技術アピールをする。
    この場合、特許権者側の技術や業務についてある程度理解が深いか、もしくは事業と技術に詳しいコーディネーターの存在が必要。また、自社でノウハウもしくは特許権者を上回る改良特許、応用特許を持つことが必要となる。
    製造業ならば機能部品など付加価値の高い製品として提供できることが収益につながる。1.と同様に、特許明細書を参考に狙いとする企業の技術を分析することで効果的なPRができる。

    3.特許権者の活用可能な特許等を基に、自社で売れるであろう市場を想定し、ライセンスを受けて商品化をする。この場合、特許権者が基盤とする市場以外、あるいは事業に影響が出ない異業種・異分野・異地域への展開が可能な企業であることが必要なときがある。

    1.・2.はビジネスに近く、自社に強い技術をもって提案できる企業、3.は自社の強み弱みと市場ウォンツをよく分析している企業で、柔軟な考え方でその時に応じて必要な製品を素早く投入することができる企業といえる。
    3.のような企業のほうが、変わりやすい時勢に対応した強い企業になるといえる。

     特許法は日本の法律でも崇高な条文である。

     特許法第1条より 

     『この法律は、発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もつて産業の発達に寄与することを目的とする。』

    産業を発達させるためにあるのが特許である。そのために特許庁は様々な施策を立てて実行してきている。特許情報検索システムの充実、知財総合支援窓口の拡充、海外知財プロデューサー事業、そして近く特許流通事業を新たな形で展開する。大企業においてはP&Gがオープンイノベーションに早くから取り組み、多くの製品やサービスを生み出している。そして、今年になってやっと地域の金融機関が技術移転による新しいビジネスの支援を進める事業を始める。中国地域でも山口大学が知的財産の利用料を一定期間無料にすることに合わせて、山口大学・山口県と山口フィナンシャルグループの3者が連携して地域企業の新事業創出支援に乗り出す。広島県の金融機関でも同様の動きがこれから加速していくことを聞いている。このような知財と金融が融合して技術移転が進むことで、事業化はさらに高まる。前述の3.のような他社の知財を活用して、自社の分野で大きく活かすような事業者が新しいビジネスを起こしやすい状況にあるのだ。

     中小機構中国本部の窓口相談でも、企業からの要請に応じて大学TLOとの技術移転契約やマッチング、その後の事業展開まで相談対応している。ぜひ相談に活用してほしい。

    また、中国経済産業局 知的財産WEB動画セミナーホームページ『もうけの花道』内の“もうけのびっくりたまご”は、特許技術の新たな活用を図ろうと設けたページである(詳細 http://www.chugoku.meti.go.jp/ip/index.htmlにアクセス)。(新規ウィンドウに表示)また『もうけの花道』のページでは知財を活用してビジネスに成功している事例を経営者のインタビューも含めてわかりやすく紹介している。参考にぜひ見てほしい。

    前回、金融機関にもっと注力して欲しい、金融機関は知的財産活用には最短距離の位置にあり、強化すべきである、と述べた。ビジネスの活性化をより一層進める取り組みが、新事業と知財、金融の融合により始まる。

    私は、特許法の目的は権利化による他社排除ではなく、発明を尊重し活用し競争しあうことで、日本が、そして世界がともに良くなっていくものだと読んでいる。そして、それを侵すものに対しては徹底した対抗を図り守るのが知財戦略である。中小企業こそ知的財産権を活用することでさらに発展できると信じている。知恵と工夫とあきらめない信念で開発が成功することを願ってやまない。

    ビジネスは知財と共に。

    チーフアドバイザー(知財) 桑原 良弘

    ※このコラムは2015年11月4日に配信されたメルマガ「広島校だより Vol.110」に掲載されたコラムです。メルマガ「広島校だより」を配信希望の方は、広島校だよりからお申込みください。