トップページ > 経営支援・相談 > コラム「モノ・知・技」 > 第79回「知的財産推進計画2015」に思う視点

第79回「知的財産推進計画2015」に思う視点

  • 8月の執筆者はチーフアドバイザー(知財)桑原良弘です。

    「知的財産推進計画2015」に思う視点

    「知的財産推進計画2015」が6月19日に決定、発行された。

    主旨として、
    「地方における知財活用の推進」
    「知財紛争処理システムの活性化」
    「コンテンツおよび周辺産業との一体的な海外展開の推進」
    を重点3本柱としている。

    ※詳細は、https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/index.htmlを参照。 (新規ウィンドウに表示)

    当方からみた状況として、「第1.地方における知財活用の推進」とある。
    現場での状況としては、

    という点が多い。「知財ビジネス評価書」及び「知的資産経営報告書」の作成支援など、知的資産の活用を図るべく、金融機関や支援機関の動きは以前よりは活発になっている。

    ・ビジネスにおける知財活用に至っている中小企業は未だ少ない
    ・知的財産の権利化の先にある課題を認識していない
    ・権利化にあたっての、オープンクローズ戦略に関する理解が深まっていない

     という点が多い。「知財ビジネス評価書」及び「知的資産経営報告書」の作成支援など、知的資産の活用を図るべく、金融機関や支援機関の動きは以前よりは活発になっている。

    海外における権利化支援及び模倣品・海賊版対策等の知財支援強化としては、工業所有権情報・研修館(特許庁関連の独立行政法人)の「海外知財プロデューサー事業」が進んでいる。海外と国内の知財戦略の違いはそれほど大きくないが、海外では特許制度に違いが出るのでその留意が必要である。

    海外展開に成功している中小企業のポイントとしては、以下の点が挙げられる。

    ・現地のことは現地に任せ、必要なノウハウは出さず、真似される恐れのある「外部から見える部分」は権利化をしていく、といった考え方がまとまっている(オープンクローズ)。

    ・基本的に、差別化するには商標が最優先であることを認識しており、ブランド戦略を構築している。

    当方は、事業者から相談を受けた際にはこれらのポイントの重要性について力説している。

    一方、特許技術の活用による新事業展開の視点について、オープンイノベーションと言われるが、特許流通アドバイザー制度が終了して以降、「知財ビジネスマッチング」の支援事業は自治体の活動となり、動きは低調となっている。これらの技術マッチングの支援事業は技術のビジネス展開に対する目利き、提案先の選定・訪問、具体化させるためのアテンド、具体化のための資金調達支援、具体化後の販路開拓など、全般にわたっての支援が必要であ
    り、片手間ではできず、また、人材も不足しておりなかなか進まないといえる。

    中小機構中国本部で開設している窓口相談では、企業からの要請に応じて大学TLOとの技術移転契約やマッチング、その後の事業展開まで相談対応している実績がある。ぜひ活用してほしい。

    取り組むべき課題として《中小企業の知財戦略の強化》はよく言われるが、ビジネスにおける知財活用に関する相談機能等の強化として、よろず支援拠点における相談体制の強化、知財総合支援窓口における相談機能の強化などが挙げられている。

    中国経済産業局では知的財産WEB動画セミナーとして、ホームページ『もうけの花道』を公開している。知財戦略について楽しく、わかりやすく理解をするにはうってつけのサイトである。

    http://www.chugoku.meti.go.jp/ip/index.html (新規ウィンドウに表示)
     

    また、知財支援の窓口として、金融機関にもっと注力して欲しい。金融機関は知的財産活用には最短距離の位置にあり、強化すべきである。
    「もうけの花道」などを参考に金融機関に知的財産の知識をつけてもらい、ビジネスの活性化をより一層進めて欲しいものである。

    最近の動向として注目すべきは、改正特許法が成立したことで社員の発明が企業に帰属されることである。社員が職務としてなし遂げた発明について、特許を取る権利を「社員のもの」から「企業のもの」に変えられる改正特許法が、7月3日の参院本会議で可決、成立した。
    この改正により、企業は「発明の対価」をめぐる訴訟リスクを減らすことができる。一方、社員の発明への意欲をそがないよう、企業は特許庁の指針に沿って社員に対価を支払う。このため、今後、企業はあらかじめ権利の取得や対価の支払いを、社内規定などで決める必要がでてくる。

    また、特許の価値を高めるため、特許の侵害訴訟で原告側が証拠を集めやすくしたり、損害賠償額を引き上げたりする検討に入ることが「知的財産推進計画2015」に明記され、訴訟では、特許権の侵害の有無や賠償すべき損害額の立証責任は原告側にある。原告側の証拠収集手続きの機能を強める方法を検討する必要があるものの、このような施策展開は重要なものになる。

    営業秘密の保護については、中小企業の多くの悩みの種になっている。IT化が進むほど情報漏えいリスクは高まっており、この相談は増える一方。社員の退職時の対策、パソコンの使用方法(クラウドの有効利用)、情報管理体制
    構築の支援は知的財産を守るために重要な視点といえる。また、技術のノウハウを日付確定(タイムスタンプ)をして預かるサービスを特許庁が進めようとしている。権利化と同様にノウハウ、営業秘密の確保は国としても重視している。今後も知的財産にかかる施策動向は、よりビジネスで重要になっていく。

    ビジネスは知財と共に。

    チーフアドバイザー(知財) 桑原 良弘

    ※このコラムは2015年8月5日に配信されたメルマガ「広島校だより Vol.107」に掲載されたコラムです。メルマガ「広島校だより」を配信希望の方は、広島校だよりからお申込みください。