トップページ > 経営支援・相談 > コラム「モノ・知・技」 > 第73回「グローバル知財戦略フォーラムに参加して」

第73回「グローバル知財戦略フォーラムに参加して」

  • 2月の執筆者はチーフアドバイザー(知財)桑原良弘です。

    「グローバル知財戦略フォーラムに参加して」

    明日のグローバル知財活用戦略を考える、をテーマに先日1月26日から東京・渋谷で開催された特許庁主催のフォーラムに参加した。約1000人が参加するフォーラムである。今回はフォーラムでの情報をもとに地域における中小企業の事業戦略・知財戦略について考えてみたい。

    フォーラム初日の特別セッションではIBM・味の素・CANONと、日本を代表する企業の知的財産部長が各々の企業の活動と課題について、状況と意見を述べた。テーマは「グローバルビジネスを可能にする知財マネジメント『日本企業の知財戦略は、世界のビジネスモデルに通用するか』」

    大企業の話だから中小企業とは勝手が違う、というのは早計で、大企業とはいえ様々な手立てを講じながら、自社のビジネスを展開している。いずれの会社にも共通して言えることは、知的財産権は各国により制度にばらつきがあり、また各国の事情で事業や製品は変わっていく。また、新興国の技術開発が進んでいることや、提供する製品が様々な分野・市場で使われるようになった(使っていくようになった)ため、1社だけでの事業展開では賄えない、ということである。従来の知的財産権による事業防衛(独占的排他)では成立たない。

    IBMはいち早く知的財産を公開し、オープン化により、先端技術をライセンスすることで知財の価値を高め、同業異業のレイヤーを変えた展開で事業を広げている。CANONは市場の独占から支配への切り替えを考えているという。これは独占することが自社の知的財産権だけでは難しくなっており、部品、材料などの川上から川下である顧客・販売網・OEM先まで、関わる全ての知恵を結集して、その分野の市場で優位なビジネス展開をしていくということである。味の素は食品や飼料といった機械・部品とは全く違う分野での事業を進めている。世界に拠点をもって製造開発を手掛けているが、世界で勝つにはより専門性の高い製品が不可欠であり、現地で事業をするその国の社員との情報共有に注力しているという。また、食品は模倣品対策が重要であり、ブランド戦略展開が優先される。

    企業の大小に関わらず、事業戦略における課題は当然ながら同じものだ。完成品メーカーとか部品メーカーとかそれは関係ない。すべてにおいて優先されるのは事業戦略であり、その事業を支えるのは有効な知的財産戦略である。知財フォーラムだから知財に傾倒しているということではない。研究開発だけでは売れる・勝てる商品開発が難しくなっている。ビジネスを開発後の事業優位を考えていくことが重要であると考える。
    商品開発においてはビジネスをどうプロデュースするかがますます重要になってきている。

    そして、その軸となるのは知的財産権であるといえる。

    午後のセッションではこのようなグローバル化が進む中で、社内の知財人材育成をどのように進めるか、というセッションがあった。特許庁も施策課題として人材育成は重要であるとしている。

    ところで、前回のメルマガで自社優位の開発に通じる知財マネジメントスキルを習得し自社の企業力を認識し、これからの事業戦略、知的財産戦略、研究開発戦略の方向性を明確にしていくワークショップを行っていることを報告し た。

    昨年末にワークショップを終え、さらには先日のグローバル知財戦略フォーラムを聴講することで思いを強くしていることがある。まずワークショップには中国地域の有力な中堅企業の開発・知財担当に参加頂いた。とても優秀なメンバーが集まり、各社の知的財産マネジメントについて、これから進むべき自社の事業を、市場・顧客・技術力そして知的財産の観点から分析し、特許調査を経て方向性をまとめてきた。共通して言えることは、顧客を海外に求めることは必然であり、その特許戦略は、自社の展開分野ではないところへも広げていかなくては生き残れない、ということであった。熱心な議論と調査、小生も一緒に参加しながら深めてきた結果であり、成果であった。

    地域において少ないメンバーで知財マネジメントを進めても、わかりやすい手法で進めれば、東京で、大企業で、話している結果と大きくは変わらないことが分かった。このような知財マネジメントについては中小企業でもできるので、ぜひ各社でしっかりと議論して備えをして頂き、これからのグローバル化をどんどん推進していってほしい。

    自社とその仲間が優位に立つために、知的財産マネジメントが支えとなる。
    ビジネスは知財と共に。
                                   以上

    チーフアドバイザー(知財)桑原 良弘
     

    ※このコラムは2015年2月4日に配信されたメルマガ「広島校だより Vol.101」に掲載されたコラムです。メルマガ「広島校だより」を配信希望の方は、広島校だよりからお申込みください。