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第71回「麦と豆」

  • 12月の執筆者は、チーフアドバイザー(技術)山本茂之です。

     「麦と豆」

    麦には、大麦と小麦があります。大麦と言えば、今はビールを連想します。他に、麦茶も出てきます。子供の頃に食べた記憶がある麦飯も出てきそうです。健康志向の方なら、麦飯は今でも主食として口にされているのではないでしょうか。麦飯を食う、とは服役中の受刑者を表す代名詞と言う人もいます。何が出てくるかは、その人次第。

     

    大麦は、穂の形状(結実する穂の付き方)の違いから、二列に並んで付く二条大麦と、六列に並んで付く六条大麦とに分けることが出来ます。

     

    実と皮の剥がれやすさに注目して、揉むだけで皮が剥ける裸麦と、揉んでも剥がれない皮麦とに分ける分類の仕方もあります。裸麦の品種のほとんどは六条大麦で、一方、二条大麦の品種のほとんどは皮麦です。

     

    ビールの醸造には二条大麦が使われます。麦茶や麦飯は普通、六条大麦です。キリンビバレッジの「香ばし麦茶」は、深煎りした六条大麦と二条大麦をバランスよく配合することで、爽快な喉ごしとすっきりした後味が楽しめる、と宣伝されています。二条大麦のほうが、六条大麦より粒が大きいという特徴があります。

     

    一方、小麦は米、トウモロコシとともに世界三大穀物に位置づけられるほど、今では欠かせない食料となっています。

     

    小麦は、普通は種子を粉にした小麦粉として利用されます。小麦粉の成分の8割程度はデンプンで、他に1割程度のタンパク質が含まれています。このタンパク質はグリアジンとグリテニンから成っており、これらは水を吸収するとグルテンに変化します。このグルテンは粘り気があるのが特徴で、この特有の粘り気こそが、料理への小麦粉の多様性を生む正体です。

     

    小麦粉は、含まれるタンパク質の割合によって、強力粉、中力粉、薄力粉に分けられます。タンパク質の割合が異なると、グルテン量の違いから、加工特性(粘り気や硬さ等)に違いが出てきます。強力粉はタンパク質の割合が、12%以上、中力粉は9%程度、薄力粉は8.5%以下含まれているものを言い、それぞれ、パン・中華麺用、うどん・お好み焼き・タコ焼き用、ケーキ・天ぷら・菓子用に使い分けられています。

     

    大麦の生産量は、2012年FAO(国際連合食糧農業機関)統計値によると、全世界で1億3,289万トンでした。国別ではロシアが第一位で、1,395万トン。一方、小麦の生産量は、6億7,087万トンでした。中国が第一位で、1億2,058万トン。このように、近年では、小麦の方が大麦よりも5〜6倍ほど多く生産され、消費されているのが現状です。

     

    大麦と小麦は、穀粒や草丈の大きさから、大麦、小麦とネーミングされた訳ではありません。大麦、小麦の大と小の漢字の意味は、大は「品質が優れている、用途が広い、本物」を表しており、反対に、小は「品質が劣っている、用途が狭い、代用品」を表しています。

     

    大麦も小麦も、1万年前には栽培されていた痕跡がありますが、製粉して粉の形にしなければいけない小麦よりも、殻やフスマ層を取り除いて粒のままで飯や粥として食べることが出来た大麦の方が、優れていると考えられた訳です。

     

    時代の推移とともに、今では大麦と小麦の位置付けは完全に逆転し、生産量からしても、料理への多様性からしても、現在では、大麦を小麦、小麦を大麦と言った方が、実態を正確に表していると言えます。

     

    麦と同様に、豆にも大豆と小豆があり、この大小もまた然り。ただし、後述するように、麦と違って、豆の場合は、正に大豆が大豆、小豆が小豆であり、ネーミングと実態とがピッタリ合っていると言えます。小豆(しょうず)は、アズキとも言われ、むしろ和名のアズキの方がポピュラーかもしれません。しかし、アズキと表現したのでは、このコラムは書けません。

     

    大豆は、日本食にとっては必要不可欠な存在です。味噌、醤油、納豆、豆腐、豆乳、煮豆、甘納豆、炒り豆、枝豆等、多様な加工食品の食材として使われています。一方、小豆は、赤飯、羊羹、餡(あんパン、饅頭、最中、ドラ焼き)、ぜんざい、汁粉等の食材として使われています。

     

    大豆の生産量は、2012年FAO統計値によれば、全世界で2億5,314万トンでした。国別では米国が第一位で、8,205万トン。小豆は、中国、米国、カナダ、タイ等で生産されていますが、日本以外の国は生産統計が未発表で、詳細は不明です。日本では、2009年統計で、5万4,900トンの生産量でした。統計が公開されていないのは、世界的に見て、小豆は重要な食品と見られていない証しかもしれません。

     

    このように、豆の場合には、加工食品としての多様性からしても、生産量からしても、また豆の大きさからしても、大豆が大豆、小豆が小豆であることは、間違いありません。

     

    食料の他にも、大小が使われる場合があります。大学と小学、大便と小便、大馬鹿と小馬鹿、大雨と小雨、大潮と小潮、等々。他にも沢山あると思いますので、是非大小の世界に思いを巡らせてみては、いかがでしょうか。

      

    チーフアドバイザー(技術)山本茂之

     

    ※このコラムは2014年12月3日に配信されたメルマガ「広島校だより Vol.099」に掲載されたコラムです。メルマガ「広島校だより」を配信希望の方は、広島校だよりからお申込みください。