トップページ > 経営支援・相談 > コラム「モノ・知・技」 > 第68回「島と半島」

第68回「島と半島」

  • 9月の執筆者は、チーフアドバイザー(技術)山本茂之です。

     「島と半島」

    広辞苑で瀬戸内海の意味を調べて見ると、「・・・大小三千の島嶼が散在して・・・」と解説されています。「島嶼」の「島」は大きな島、「嶼」は小さな島のことで、つまり島々という意味です。

     

    本当に三千もの島々があるのでしょうか。誰が、どのようにして、どのような基準で島の数を調べたのでしょうか。誰かが数えたにしても、そもそも、島とはどのようなものなのでしょうか。海水面は潮の満ち引きによって、上下します。満潮の時に、水面下に没するような岩礁も、島なのでしょうか。

     

    島について、拠り所が一番確かそうな国連海洋法条約の中にある、島の定義を見てみましょう。それによると、島とは、「自然に形成された陸地であって、水に囲まれ、高潮時においても水面上にあるものをいう。」となっています。干潮の時に水面上にあっても、満潮の時に水面下に没するような地形は島ではないということです。また、神戸のポートアイランドのように、人工的に埋め立てられた地形は、たとえ水に囲まれ、水面上にあるとしても、島ではないということになります。

     

    海上保安庁が、昭和61年に瀬戸内海の島の数について調べています。海図上での話です。それによると、海図に島名が記載されている島を、カウントすべき大きさの参考にして、満潮時に周囲の長さが100m以上ある島の数をカウントしています。島が真ん丸だとすれば、直径にして31.8m以上の地形をカウントしたということになります。真ん丸の島は実在しないと思いますが、直径で考える方が、カウントした島の大きさを感覚的にイメージ出来ます。その他のカウントの基準として、何らかの形で本土と繋がっている島について、それが橋、防波堤のような細い構造物で繋がっている場合は島としてカウントし、幅が広く繋がっていて本土と一体化しているような場合は除外されています。

     

    結果は、周囲の長さが100m以上ある島の数は、瀬戸内海に727あるそうです。それ以降に、埋め立てにより、陸続きになった島もありますので、現在ではこれよりは少なくなっているはずです。因みに、海図に島名が記載されている島の数は、681あります。

     

    周囲の長さが100m未満の島も、名前は付いていなくても、立派な島です。満潮になっても水面下に没せず、周囲100m未満の自然な陸地が数多くあることは、瀬戸内海を実際に見たことがある人なら、経験済みのことです。先人は、このような観察と推理眼から、「瀬戸内海には大小三千の島嶼が散在し・・・」の、広辞苑の瀬戸内海の説明に至ったものと推測されます。

     

    瀬戸内海には、周囲が100m以上の島が727島あることは、既に述べた通りですが、このうち広島県に142、愛媛県に133の島があり、これら両県で、瀬戸内海の島の数第1位と第2位を占めています。2014年3月21日〜10月26日に亘って、この両県によるイベント「瀬戸内しまのわ2014」が開催されているのは、大いにうなずけるところです。

     

    日本は島国と言われます。領土が、全部島なのです。北海道、本州、四国、九州は、島の定義からすれば、島なのですが、普通は島を付しては言わず、沖縄本島を含めた五つの島を、本土と称しています(国土交通省の定義)。上記の瀬戸内海の島の数の調査に留まらず、海上保安庁は日本全体の島の数を調べています。それによると、北海道、本州、四国、九州、沖縄本島を含めて、日本全体で6,852の島があります。

     

    国土交通省は、この6,852の島を、本土と離島の二つに区分けしています。離島は、6,847島あることになります。一方、離島振興法では、離島は常時陸上交通が確保されていない地域の有人島を振興対策の対象としており(一部、例外あり)、ある意味、手厚い支援策が施されています。橋が架かって、本土から陸続きになった島は、この法律では離島ではなくなり、振興の対象とはならなくなってしまうのです。

     

    最近の身近な例として、それを嘆く島民の声を聞いたことがあります。広島県の大崎下島は近隣との島の間には橋が架かっていましたが、本土とは、途中に橋が架かっていないところがあり、本土と陸続きではありませんでした。2008年の豊島大橋(アビ大橋)の開通で、本土と完全な陸続きになりました。本土から4番目の島になり、さらにその先、愛媛県の岡村島までの7島が本土と繋がっています(とびしま海道)。この利便性向上とは裏腹に、大崎下島は離島振興法の対象の島ではなくなってしまい、振興支援策を受けられなくなってしまったのです。

     

    隣接する大崎上島は、今も完全な離島です。2013年公開の映画「東京家族」は、山田洋次監督の離島への強いこだわりから、映画のロケ地(主人公一家の出身地)として、大崎上島に白羽の矢が立ったと言われています。

     

    島は、英語ではislandです。ラテン語ではinsulaです。語源を同じくする、isolation(孤立、隔離)、insulator(絶縁体)、insulin(インシュリン、ランゲルハンス島から分泌)等は、正に島の定義を連想させるものです。

     

    国語辞典には、「半島:海に向かって長く突き出している陸地。小さいものは岬・崎・鼻などという。」とあります。島なら、四方を海に囲まれていますが、ほぼ三方を海に囲まれている半島は、半分は島のようなもの、と理解出来ます。

     

    半島は、英語ではpeninsulaです。penはペンのことではなく、「ほとんど(almost)」の意味を表す接頭語のpene-とinsulaがくっ付いたもので、母音のiが続くので、後ろのeが取れて、peninsulaとなったものです。したがって、「ほとんど島」と言う意味で、日本語ではこれが半島と表現されています。

     

    皆さんも、瀬戸内海の島の数をカウントされてはいかがでしょうか。ただ、海図は入手しにくいでしょうから、ネットの地図を利用されてはいかがでしょうか。その前に、そもそも瀬戸内海はどの領域を指すのか、そこから調べを始めなければいけませんね。その糸口は、「瀬戸内海環境保全特別措置法」です。

     

    チーフアドバイザー(技術)山本茂之

     

    ※このコラムは2014年9月6日に配信されたメルマガ「広島校だより Vol.096」に掲載されたコラムです。メルマガ「広島校だより」を配信希望の方は、広島校だよりからお申込みください。