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第63回「PM2.5について」

  • 4月の執筆者は、チーフアドバイザー(モノづくり)大村 卓一です。

    「PM2.5について」

    PM2.5という記事を見る機会が多い。直径2.5マイクロメートルより小さな微粒子が大気中に浮遊し悪さをしているという記事だ。最近印象に残っているのは、「工学院大学の坂本哲夫教授らは中国などから飛来するPM2.5を1粒子単位で分析できる顕微鏡を開発した。(採取し開発した顕微鏡で分析すると)表面は排ガスの主成分である硫酸塩が多かったが、内部は煤の燃え残りのブラックカーボンが占めていた。これが地球温暖化の一因になっているとみている。」(2月28日:日本経済新聞)

     

    顕微鏡で観察できる程度の大きさの微粒子が気体分子と同様の挙動をするということを、ロバート・ブラウンが水の浸透圧で破裂した花粉から水中に流出し浮遊した微粒子を顕微鏡下で観察中に発見し、アルベルト・アインシュタインが熱運動する媒質の分子の不規則な衝突によって引き起こされる現象であると説明した、のだから確かに微粒子が水や空中を浮遊することは正しいのである。しかし、微粒子とは言え気体分子より遥かに大きな物体が気体と同じように空中を飛び回っているというのは、飛行機が空を飛んでいるのと同じように何か釈然としない。顕微鏡で観察できるサイズだから1マイクロメートル位までの塵が、0.3ナノメートル程度の気体分子が衝突して動かすことが自然の摂理にあっているということをブラウンさんやアインシュタインさんが証明したということなのです。例え話にすると、ゴルフボールが繰り返しの衝突によって直径10メートルの満タンになっているガスタンクを空中に漂わしている、ということになるのです。付け加えておかなければいけないことは微粒子に衝突する気体分子は秒速500メートル位の速度(音速以上の高速)で微粒子にぶつかっているようです。

     

    PM2.5に関して先ほど紹介したように、悪いことばかり耳に入ってきます。確かに悪さをする物質のようですが、『小さな塵の大きな不思議(ハナ・ホームズ著/岩坂安信監修・梶山あゆみ訳)』に次のような話が紹介されています。「カリブの島々はたいていサンゴの化石で出来ている。・・・・サンゴ礁は純粋な炭酸カルシウムで出来ているにもかかわらず、1627年無人島だったバルバトス島に入植した英国人は島全体が美しい森林におおわれていたと報告している。バルバトス島の土は40センチから1メートルくらいの厚さのアルミノケイ酸塩が主成分だ。その起源を米国地質調査所の研究者、ダニエル・ムースさんはサハラ砂漠が少なくとも75万年前からこの地方に塵を運んでいたことを突き止めた。サハラ砂漠が塵を遠方まで飛ばしていることは科学者の間で古くから知られていた。チャールズ・ダーウィンもその一人。」「中国の黄土高原、アメリカ中西部、南米パンパス、ヨーロッパの、ウクライナのどの世界の穀倉地帯はサハラ/ゴビ/タクラマカン砂漠から飛んできた塵が堆積した土地で、農耕に厄介な石ころが混じっていないし、難なく耕作できるし、スポンジのように水を吸い込むので作物は目を見張るほどよく育つ。」

     

    サハラ砂漠とカリブ海は5,000キロメートル以上隔たっている。PM2.5クラスの塵がこの物語の主役であったことが推察できます。ゆったりとした確実な自然の営みの中でPM2.5は人間の生存基盤を築いてくれていた。それが今、冒頭のPM2.5分析結果が示すように全く異質の、しかもこれまでの生態系を脅かす物質と理解しなければならないPM2.5のほうが多くなってきているということだ。砂漠だけでなく植物や動物はもちろん人間も塵を発散する。自分が発散する塵が気体分子と同じ挙動をするということは、即ち被害者ではなく加害者でもあることも理解し行動しなければならないことに気付かされた。

     

    万葉の時代PM2.5を「春霞」と云っていた?

    春霞 たなびく山の桜花 見れども飽かぬ君にもあるかな

    紀友則 古今和歌集

    春霞たなびく山の桜花 うつろはむとや色かはりゆく

    題・読人不明 古今和歌集 巻第二 春歌下

    代表的な和歌には物憂さは感じるが厄介者という認識はなかったようだ。

     

    ものづくり支援チーフアドバイザー 大村卓一

     

    ※このコラムは2014年4月2日に配信されたメルマガ「広島校だより Vol.091」に掲載されたコラムです。メルマガ「広島校だより」を配信希望の方は、広島校だよりからお申込みください。