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第44回「腱と靭帯」

9月の執筆者は、 チーフアドバイザー(技術)山本 茂之です。

「腱と靭帯」

ゴルフ仲間が怪我のため、相次いで脱落です。そうなると、麻雀と同じで、メンバー集めに苦労します。プレー回数も、自ずと減ってしまいます。

 

怪我は二人とも腱にかかわるもの。一人は右手薬指の腱鞘炎、もう一人は左肩腱板断裂。

 

腱は骨格を動かす筋肉(骨格筋)の両端にあって、筋肉を骨に付着させる線維状の組織(結合組織)のこと。その組成は、ほとんどが線維質であるコラーゲンです。

 

人体の中で最大の腱はアキレス腱です。15cmほどの長さの強靭な腱で、ふくらはぎにある腓腹(ひふく)筋と平目(ひらめ)筋を、かかとの骨に付着させる役目をしています。歩行、疾走、跳躍などの運動を行う時に、かかとを持ち上げたり、着地する足の爪先で地面をグリップするなどの重要な機能を担っています。

 

腱鞘炎という病名は、よく耳にする言葉です。鞘とはサヤ(刀のサヤ、豆のサヤ等)のことです。
   
腱は周りをこのサヤで包まれています。このサヤの中には、潤滑の役目をする滑液が含まれていて、腱と腱鞘の間のスムースな滑りをもたらしています。サヤはこの他にも、重要な働きをしています。もし、このサヤがないと、筋肉が収縮した時に、それまで湾曲していた筋肉が最短距離になるように中央付近が移動するだけになってしまい、収縮の動きが反対側に伝わらないことになってしまいます。このサヤがあるからこそ、中央付近が移動する動きが制約され、筋肉の収縮が反対側に伝わり、関節を動かすことが出来るのです。
  
腱鞘炎は指や手首の使い過ぎで、このサヤが肥厚したり(サヤの内径が小さくなる)、腱が肥大する(腱の外径が大きくなる)ことによって、腱がサヤの中をスムースに滑らないようになる通過障害により炎症を起こした状況です。
  
自然治癒が難しい時は、サヤ内に局所麻酔剤入りステロイド注射をして症状を抑える処置が採られますが、それでも症状が変わらない時や、指が曲がったまま戻らなくなった時などには、サヤの一部を切離する外科的手術が施されているようです。
   
腱鞘炎は、指や手首を反復して使う人に多く見られる一種の職業病とも言えるもので、作家や漫画家など筆記具を多用する人、料理を片手で持ち運びすることが多いウエイター・ウエイトレス等がかかることが多い病気です。手首のスナップを利かすことが多い、テニス・バドミントンプレーヤー、野球選手、ゴルファー等にも、よく見られます。
  
私のゴルフ仲間は、これらのどの職業にも就いていませんが、腱鞘炎になってしまいました。
  
今から5年ほど前に、出張先で仕事中に両手が痺れて白蝋病のような現象が起きたそうです。両手を湯に漬けて暖かくしましたが、症状が回復するのに時間がかかったそうです。当日は冷え込んだ様子でもないのに不思議に思ったそうで、その後、時折このような現象があったとのこと。
  
更に、3年ほど前から、冬の朝のウオーキングで異常な手の冷え込みが気になってきたとのこと。2年前に、左手の薬指が痛くなり、指の屈折が苦痛になり、整形外科で治療を始めました。ステロイド注射の繰り返しと手術で、回復に3ヶ月かかったそうです。
  
その後も朝のウオーキングで手の痺れが度々あり、今年2月に、今度は右手の薬指が腱鞘炎になり、再度の手術になったという実話です。二度の経験から、指の血流がよくないことが腱鞘炎の原因となるのではないか、特に冬場には十分に気をつけたい、というのが本人の弁です。
 
手術後、今は回復に向かっているようですので、近いうちにまた一緒にプレー出来るでしょう。
 
もう一つの腱板断裂はあまり聞いたことがありませんが、腱鞘炎よりは、はるかに重篤な怪我です。腱板とは肩甲骨(貝殻骨)から上腕骨(二の腕の骨)に繋がる小さな四つの腱と筋肉の総称です。肩甲骨の肩峰という部分の裏を通って、上腕骨を包み込むように被っています。
 
本人はいつ腱板が切れたのか気づいていませんでした。プレー中にドライバー・ショットをした時に違和感があり、少し痛いと思ったそうですが、よくあることで、その日はそのまま。いつまで経っても肩の痛みが取れないので、てっきり五十肩(本人は60才台ですが)と思っていたとのこと。そのうち夜中にも疼きがひどくなって我慢出来なくなり、1ケ月ほど経った時に病院で診察を受けたら腱板断裂だった、ということです。手術により、腱を繋いで、その後リハビリ装具の外転枕を着けて2ケ月ほどのリハビリを行って退院しました。今は自宅療養中ですが、メンタル面からも、恐らく早期のゴルフ復帰は難しそうです。
  
骨と骨格筋を繋いでいるのが腱であることは上に述べたとおりですが、一方、関節を構成する骨と骨を繋いでいる短い線維状の強靭な組織(結合組織)が靭帯です。靭帯は関節の周りにあってその一部を構成しています。靭帯は関節の強度を保ったり、関節の安定に役立つ働きをするとともに、関節の可動域を制限する働きもしています。腱と同様、コラーゲンで出来ており、腱よりも密度が高い。
  
靭帯損傷は膝の関節でよく見られます。膝は上側の大腿骨(モモ)と下側の下腿骨(スネ、脛骨と腓骨)を繋ぐ部分で、これら二つの骨の間にある半月板、膝の前側にある膝蓋骨(しつがいこつ)(膝のサラ)を含めて、膝関節が構成されています。これらの骨を主要な五つの靭帯で支えて、膝機能が生み出されています。
  
膝の外側にある外側側副靭帯、内側にある内側側副靭帯は、それぞれ膝の外側と内側の補強で、関節が左右にずれない働きをしています。膝の前側にある膝蓋靭帯は、膝の前側の補強です。前十字靭帯は脛骨の前面に付着し、半月板の穴を通って斜め後ろ側の大腿骨に付着しており、膝を強く速く伸ばした時に、下腿が前に付き出ないように働いています。後十字靭帯は脛骨の後面に付着し、もう一方が大腿骨の後ろ内側面に付着しており、膝を曲げた時に、下腿が必要以上に後ろに移動しないように働いています。
 
靭帯損傷した知人はおりませんが、スポーツではよく起きる怪我です。スキー、サッカー、バレーボール、バスケットボール等で、ジャンプの着地の際に膝を捻る動作(膝の方向がツマ先方向より内側に入る)をした時に、靱帯が損傷されやすい傾向があるとされています。体のぶつかり合いや、土俵際での転倒が常の相撲において、膝や肘にサポーターやテーピングをした力士が多いのは、しばしば目にする光景です。今年7月のコンサートで、歌手の長渕剛がスライディングのパフォーマンスを行った際に負傷したのは、左膝の内側側副靭帯の損傷でした。
  
靭帯は骨と骨を繋ぐ関節周りだけとは限りません。クーパー靭帯(乳腺堤靭帯)は乳腺を皮膚・筋肉に繋ぎ止め、バストの下垂を防ぐ網目状の吊りケーブルの役割を果たしているコラーゲン組織です。クーパー靭帯は、ランニングを始めとするスポーツ起因の振動、過度のバストアップマッサージ等によって痛んだり切れたりすると言われています。これら重力や加齢により、クーパー靭帯が損傷すると、元には戻らず、次第にバストの位置が下垂することになります。唯一の対策はブラジャーの着用(とメーカーは言っています)。因みに、9月8日は国内の某企業が制定した「クーパー靭帯の日」となっています。
  
一方、スポーツ中継時によく耳にする「肉離れ」は、腱や靭帯の損傷ではなく、筋肉(骨格筋)自体の部分損傷です。筋肉が収縮している時に、強制的に引き延ばされる状態になると、筋肉を構成する筋膜や筋線維の一部に損傷が起こることが多い。サッカーのシュート動作での大腿四頭筋、短距離走でのハムストリングス(大腿後面にある大腿二頭筋等の三つの筋肉)等で多く発生しています。
  
体の動きを支える腱と靭帯について考えてみました。考えれば考えるほど人体は摩訶不思議、実に精巧に出来ていることに改めて感心します。日頃の鍛錬でこれらを丈夫にし、健康体でスポーツを楽しみましょう。
 
 
チーフアドバイザー(技術)山本茂之です。
 

 

 ※このコラムは2012年9月7日に配信されたメルマガ「広島校だより Vol.072」に掲載されたコラムです。メルマガ「広島校だより」を配信希望の方は、広島校だよりからお申込みください。