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第38回「ショウガとミョウガ」

3月の執筆者は、チーフアドバイザー(技術)山本 茂之です。

「ショウガとミョウガ」

 毎年、工業統計が国から発表されます。我が国のものづくり力の実態を数字のデータとして把握する事が出来ます。最新版は平成23年9月に「平成22年工業統計速報」として開示されています。

 

最近は「ケンミンSHOW」が流行していますので、それ風に、工業統計を見てみましょう。この中にある、平成22年製造品出荷額(ものづくり出荷額、従業者4人以上の事業所の統計)を都道府県毎でランキングすると、ベストスリーは、愛知県(37兆7901億円)、神奈川県(17兆2033億円)、静岡県(15兆6700億円)と続きます。ワーストスリーは高知県(4437億円)、沖縄県(5653億円)、鳥取県(8149億円)となっています。最下位が高知県とは如何に?

 

この答えは大変難しいと思いますが、恐らく地勢的、風土的、歴史的な背景まで遡らなければいけないのでは。キーワードは「Stand alone」。NHKドラマ「坂の上の雲」の主題曲も同じ題名ですが、こちらのほうは愛媛県に係わるもの。

 

名誉挽回のため、高知県への応援として、その他の分野での高知県の生産量日本一を探してみましょう。2次産業がダメなら、1次産業の品目別には、あるはず。高知県は日本一の日照時間を誇る温暖な気候なので、太陽と雨の恵みを一杯に受けた、野菜を中心とした施設園芸が平野部に於いて盛んです。その生産量日本一は、品目で言えば何種類かありますが、「ショウガ」と「ミョウガ」がその代表でしょう。

 

ショウガは主として地下の部分に育つ根茎が食材となりますが、地上の芽の部分も「はじかみ(端赤み)」として焼き魚等に添えられて食膳を賑わします。根茎を使った食材の代表は、薄くスライスした甘酢漬けと、梅酢で漬けた紅ショウガの二つ。甘酢漬けは、にぎり寿司を食べる時に合わせで出てくる、いわゆる「ガリ」。紅ショウガは、牛丼、お好み焼き、タコ焼き、焼きソバ、ちらし寿司等に添えられたものを、しばしば目にします。

 

ショウガは香辛料としてもよく使われます。すりおろし、粉末、千切り、刻んだものが、豆腐、素麺等の薬味として使われ、また魚や肉の料理中に臭い消しとしても使われます。その他、ショウガ湯、ショウガ糖、葛湯、ジンジャーエール等で、口にされています。

 

この利用の多さは、ショウガ独特の辛味と香りから来ています。その辛味の正体は、「ジンゲロール(Gingerol)」と「ショウガオール(Shogaol)」、香りの正体は「ジンゲロン(Gingeron)」です。化学物質を表すのに、日本語が英語の語源になっているのが面白い。

 

ジンゲロールは生の新鮮なショウガに含まれ、調理によってジンゲロンに変化して、刺激性のある甘い香りを醸します。ショウガオールはショウガを乾燥したり、加熱した時に生成され、ジンゲロールが脱水されて(ヒドロキシル基が外れて)出来るもので、より強い辛味のあるショウガになると言われています。要するに、調理や加工したショウガのほうが、辛味が強い。

 

もう一方のミョウガもまた、その独特の香りと紅色が食材として好まれて使われています。地下茎に花蕾と言われる部分が成長し、これが地表に頭を出したところを収穫した「花ミョウガ」が、広く食材として使われています。その他、新芽の若い茎である「ミョウガたけ」も食材として利用されています。

 

花ミョウガを刻んだものが、冷奴、素麺、蕎麦の薬味として添えられたり、また酢の物、みそ汁の具などにも使われています。さらに花ミョウガをそのまま甘酢漬けにしたものは、それだけで美味なオカズにもなります。ミョウガの香りと色が、これらの多様性を引き出しています。香りの正体はα-ピネン類。松などの針葉樹に多く含まれる特有の香りの元となるものです。

 

ミョウガは、その学名のZingiber miogaとショウガの学名Zingiber officinaleを比べればわかるように、ショウガと同じ仲間です。仲間と言うより、兄弟と言ったほうが良い。染色体が5倍体なので、人の手を借りなくては繁殖できず、大陸からショウガとともに持ち込まれたものと考えられています。香りが強いショウガのほうを「兄香(せのか)」、弱いミョウガのほうを「妹香(めのか)」としたことから転訛して、ショウガとミョウガになったと言われています。

 

ミョウガは食べると物忘れがひどくなる、との俗信は科学的根拠がないもの。むしろ集中力が増す、との「所さんの目がテン」での体験報告もあります。ショウガとミョウガを大いに食べて、そして飲んで、高知県の日本一を支えましょう。

 


 チーフアドバイザー(技術)山本 茂之

 

 ※このコラムは2012年3月7日に配信されたメルマガ「広島校だより Vol.066」に掲載されたコラムです。メルマガ「広島校だより」を配信希望の方は、広島校だよりからお申込みください。