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第36回「星空を眺めて」

1月の執筆者は、チーフアドバイザー(モノ作り)大村 卓一です。

「星空を眺めて」

  空を眺めていると不思議な気分になる。特にこの季節の冷え込んだ快晴の夜空を眺めていると、名のある星座が冷たい光を放っているだけでほかは深い闇。自分の頭の上には何もない。どこまで行っても何もない。延々と、それこそ無限に、何もない世界が続いている。宇宙の大きさは460億光年と言う事だからそこまでは何もない世界が続いていることになる。距離に換算すると4.4×10の28乗メートル。最近、京と言う数を表す接頭語を使う機会が出てきたが、10の28乗の事を穣と言うそうである。従って宇宙の果てまで、4.4穣メートルというとてつもなく遠くの彼方まで延々と“無”の世界が広がっている。脱線になるが、日本語(漢字)には無量大数、10の68乗、と言う接頭語があるそうだ。どんなところで必要になったのだろうか?

 

反対に、足の下はどうなっている?

 

その下には僅か14メートル位の何もない空間があるだけの祖谷のかずら橋をほとんど這うようにして渡ったのを覚えている。何もない空間はそれほど不安な気持ちにさせるものなのだ。改めて頭上の無の世界と対比してみる。

 

46時中、無の世界と向き合っているのに、全く不安を感じない。しっかりした総重量5.972×10の24乗キログラムすなわち約0.6穣グラムの大地が私たちを支えてくれているからである。しかし、地表の直下には穴掘り動物の巣や巨大な鍾乳洞があるのか、ガス管や水道管が通っているのか、船底の真下に絶滅危惧種や恐ろしい海獣が接近していたのかも俄には分らない、ぎっしり詰まった謎の世界である。何の不安もなく生活できるのは分らないことがたくさん包含されているとはいえ、大地と言う絶対裏切らないはずの“有”があるから。私たちは大きな重力によって頭上の方向には動けず、また高密度の物質に抗われていて足下にも簡単には進入してゆけず、地表と言う界面に存在している。

 

残されたもうひとつの方向、広げた手の方向を眺めてみる。

 

この方向に進むとすぐ障害物にぶち当たるけれど、意思さえあれば360度、4万キロメートルの範囲、表面積約5.1億平方キロメートル(陸地は1.5億平方キロメートル)、を動き回ることが出来る。地球は球体だから3次元と言うのかも知れないが、地表近傍の2次元空間が私たちに許された活動面。頭上や足下と比較すると極めて小さな単位で表せる狭い領域に私たちは存在している。この空間に現在70億人が生活している。陸上での一人当たりの占有面積は約170メートル四方と言うことになる。狭い領域なのだからぶつかることが当たり前。人あるいはグループ間の経済的・政治的・社会的・・・・的衝突、人と自然との衝突があらゆる出来事を引き起こしてきた。衝突をうまく切り抜けるために人それぞれ技を磨てきたし今後も知恵と鍛錬を注いでてゆくのだろう。

 

身近な私たちの活動、球技やものづくり、を分解してみよう。

 

球技はフェースとボールとの衝突問題である。ボールをフェースに当てる位置、3軸方向での衝突角そしてそれぞれの軸方向の相対速度を制御し正確に目的の場所に落とすことを競う競技と言うことになる。状況を判断し、どう対応するか定め、面を確実に実現できる人がチャンプということになる。天分もあるが身体と心の鍛錬がチャンプの必要条件になる。アマは「行き先はボールに聞いてくれ」と言うけれど制御し切れなかったのはフェースだから正確にはフェースに聞いてくれと言うのが正しい。コントロールできなかったからといって悲観ばかりすることはない、結果オーライもあるものだ。

 

電子デバイスのものづくりでは、電磁気学的 and/or 機械的 and/or 化学的and/or 光学的に急峻なあるいは緩やかな界面(表面)を、切断、切削、研磨、洗浄、製膜、パターニング、熱処理、接着・接合などのプロセスを組合せることによって創り出す。極論すると、材料の表面領域を制御することがこの分野の巧の仕事。この仕事も球技と同様、鍛錬のプロセスの中で繰り返してきた失敗を克服し、再現性のよく頭に描いた表面を作り出すことが成功の条件なのだ。

 

星空を眺めながら、地球の表面で狭い表面をつくりだし衝突をコントロールしようとしているのが人間の営みなのだと言うことに気付かされた。しかし、衝突のリアクションは表面にだけに依存しているとは言い切れない不可思議な力、相互作用、が存在している。2011年は地表の人間社会では、絆、と言う心の相互作用、そして大宇宙ではその成り立ちに関与したと言う、ヒックス粒子、の存在を確信した年であった。2012年もまた新しい発見や気付きがあることを期待する。

 


参考文献


「宇宙の大きさについて」

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%87%E5%AE%99(外部サイト・新規ウィンドウに表示)

 

「地球の重さについて」

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9C%B0%E7%90%83%E8%B3%AA%E9%87%8F

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「地球のこと」

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%96%E7%95%8C%E3%81%AE%E5%9C%B0%E7%90%86

(外部サイト・新規ウィンドウに表示)

 

チーフアドバイザー(ものづくり)大村 卓一
 

※このコラムは2012年1月11日に配信されたメルマガ「広島校だより Vol.064」に掲載されたコラムです。メルマガ「広島校だより」を配信希望の方は、広島校だよりからお申込みください。