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第35回「バーディー率とイーグル率」

12月の執筆者は、チーフアドバイザー(技術)山本 茂之です。

「バーディー率とイーグル率」

 日本ゴルフツアー機構から、ツアートーナメント部門別データが公式記録として毎年発表されています。これはプロゴルファーの1年間の生きざまが記録されたもので、学校における生徒の通信簿のような存在です。2011年版はまだ発表されていないので、昨年2010年スタッツのデータを見てみましょう。その中で、「バーディー率」1位は4.32、「イーグル率」1位は5.57、となっていることに気付きます。何で? どうして、バーディー率のほうが小さいの。素朴な疑問です。

 

「バーディー率」という文字面だけから素直に連想すれば、「バーディーを取る割合」だから、(バーディー率)=(バーディー以上を取ったホール数)÷(ラウンドした総ホール数)となりそうですが、実はそうではないのです。バーディー率は「1ラウンド当たりのバーディー獲得率」と定義されています。計算では、(バーディー率)=(バーディー以上のホール数)÷(総ラウンド数)の式で求める、となっています。

 

この定義にあるバーディー獲得率という言葉が曖昧なので、誤解を生みやすい。計算式からは当然誤解は起きませんが。別の表現を考えて、バーディー率は「1ラウンド当たりのバーディー数」、または「1ラウンドに何個のバーディーを取るか」と言えば、分かりやすく誤解は起きにくい。この定義によれば、2010年度ランキング1位は石川遼選手で、81ラウンドを回って350個のバーディーを取っているので、350÷81=4.32で、1ラウンドで4.32個のバーディーを取っていることになります。因みに、2位は池田勇太選手で、同様に312÷76=4.11で、4.11個のバーディーを取っています。

 

一方、素直な連想によるバーディー率を算出すると、石川遼選手の例では、ラウンドした総ホール数は81ラウンド×18ホール=1458ホールなので、350÷1458=0.240の計算で、0.240となります。大ざっぱに言えば、4ホールで一個のバーディー。標準的なコース設定では普通パー5は4ホールありますが、そのパー5のロングホールでほぼバーディーを取っている、と読みとってもよい。野球の首位打者の打率に比べ、1割程度低い。

 

それでは、イーグル率はどうでしょう。やはり、バーディー率と同様に素直に連想すれば、(イーグル率)=(イーグル以上を取ったホール数)÷(ラウンドした総ホール数)となりそうですが、これ又そうではないのです。

 

イーグル率は「1イーグルを獲得するために要するラウンド数」と定義されています。この定義は正式なバーディー率の定義と違って曖昧さがなく、言葉だけで、すっきり分かります。(イーグル率)=(総ラウンド数)÷(総イーグル数)の計算式で求めることが出来ます。

 

しかし、バーディー率とイーグル率の定義(決め方)がこのように異なるのは、大いに気になるところ。何故、素直な連想による定義のように、整合性のあるすっきりした定義になっていないのでしょうか。1ラウンド当たりのバーディー数(すなわちバーディー率)が、例えば4.32個と言えば、これはゴルファーにとっては直感的に分かりやすい数字。0.240の割合でバーディーが取れると言うよりは、実践的で分かりやすい。自慢話でも、今日はバーディーを4個取った、とか、3個取った、と言うほうが言いやすいし、分かって貰えやすい。計算で求める必要もなく簡単。この論法を使って、イーグル率をバーディー率と整合性がある定義にしたら、どうでしょう。つまり、イーグル率を「1ラウンド当たりのイーグル数」としてみましょう。2010年度ランキング1位は朴星俊選手で、39ラウンドを回って7個のイーグルを取っているので、7÷39=0.179で、1ラウンドで0.179個のイーグルを取っていることになります。因みに、2位は額賀辰徳選手で、同様に9÷60=0.15で、0.15個のイーグルを取っています。

 

しかし、1より小さいこの数字は、直感的にいかにも分かりにくい数字です。言うまでもないことですが、ラウンドを積み重ねてもイーグルはそんなに取れるものではないので、この定義では、どうしても1より小さな数字にならざるを得ません。そこで、上記したような正式な定義「1イーグルを獲得するために要するラウンド数」が採用されているものと思われます。この正式な定義だと、必ず1より大きな数字になり、何を表すデータかを直感的に理解しやすい。ただし、バーディー率の定義とは整合性が取れなくなってしまいますが。この正式な定義によれば、1位の朴星俊選手は39÷7=5.57、2位の額賀辰徳選手は 60÷9=6.67です。石川遼選手は81÷9=9.00で、12位でした。この定義だと数字が小さいほうがランキング上位となることは言うまでもありません。

 

因みに、イーグル率を素直な定義で求めてみると、1位の朴星俊選手は7÷(39×18)=0.00997、2位の額賀辰徳選手は9÷(60×18)=0.00833、12位の石川遼選手は9÷(81×18)=0.00617となり、小数点以下の0の多い、小さな分かりにくい数字となってしまいます。

 

これでモヤモヤは少し解消しましたが、いまだもって「バーディー率」と「イーグル率」の表現では誤解が生じる恐れは残っています。プロゴルファーの勲章とも言えるこの看板が、「1ラウンド当たりのバーディー数」と「1イーグルを獲得するために要するラウンド数」という、少し長いが誤解を生じない分かりやすい看板に早く付け替わることを見守りたいと思います。

 


チーフアドバイザー(技術)山本 茂之

 

※このコラムは2011年12月7日に配信されたメルマガ「広島校だより Vol.063」に掲載されたコラムです。メルマガ「広島校だより」を配信希望の方は、広島校だよりからお申込みください。