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第34回「権限の委譲」

11月の執筆者は、チーフアドバイザー(知財)桑原 良弘です。

「権限の委譲」

「権限を委譲する」ことについて考える機会があった。

 

経営環境が激変する中で、迅速な対応が求められ組織内での決済を早めるため、事業遂行に関する決定権を組織下部に分散させる、社内カンパニー制を敷く企業があります。市場の多様化が進むにつれ、従来のやり方では対応できないことも多く、中堅・中小規模の企業でも分野や製品ごとにリーダーに権限を委譲し、各事業部門の責任を明確にして経営効率を向上させていく方法です。

 

ある企業ではこのカンパニー制がうまく機能しています。この企業は民生品の製造販売企業ですが、自社技術を横展開し福祉用品、自動車部品と畑の違う事業を進めています。各事業部門にカンパニー長がおり、営業・企画だけでなく開発、製造、知的財産の構築・管理まで統括しています。市場がまったく違う事業では同じ組織では動けるはずもなく、カンパニー制への移行は当然ともいえます。それを支えているポイントは企業理念の理解に重点が置かれた社員教育。カンパニー長の発言と社長の発言がほぼ一貫しているところがすごい。当然と思われるかもしれませんが、完璧と言える企業はそう多くはない。さらに、いわゆる管理職はすべて経営職というそうで、各人の権限と責任の所在・範囲が明確に業績に反映されるようになっています。

 

特許戦略も明快でおもしろい。知的財産は経営上の重要な要素を締めているものの、数字として表しにくい特性もあり、現場に近いリーダーでなければ取り扱いの判断がしにくいものです。この企業のカンパニー長は「事業の基本は販売戦略にあり、販売戦略に基づいた特許戦略を構築しないと物は売れないし守ることもできない。特許優先で考えたものは売れないし活用もしにくく無駄な出願になってしまう。投資対効果を明確にした特許出願を重視している」という考えをもっています。実は別の機会に社長と話したことがあるのですが、同じことを話されていました。このカンパニー長は組織全体のことを理解して明確な指針をもって業務を遂行されているわけで、このような権限委譲ができる企業はすばらしいし、きっと将来も明るいものだと思います。もちろん社長のリーダーシップがあってこそではありますが、権限の委譲とは企業の要である人材にその企業の理念を浸透させ、同じ考え方の上で成り立つものでないとうまく機能しないものです。

 

よく権限を委譲するといって部門長に丸投げしたり、部門長に任せるといったのに介入してその部門長の立場を無くしてしまう経営者を見ることがあります。また、うまくいったのは社長の成果、うまくいかないのは部門長の責任にする経営者も見ることがあります。そのような会社は人材も定着しないようですし、会社や社員の士気や自主性もあがらないようです。衰退する前に権限委譲が進むとよいのですが。

 

企業が伸びていくにはある程度の規模になれば、製品や事業ごとに責任者を設けて権限を委譲し責任をもって業務の遂行をしていかなくてはなりません。このようなときに一貫した考え方をトップが示し、社員がその考え方を共有し、各人はその役割に応じた責任を持ち、トップはそれに応えていく。

 

当たり前のことを改めて当たり前に考えてみる機会でした。知的財産を活かすのは事業戦略を構築していく人にあると。ビジネスは知財と共に。

 

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以上

 

チーフアドバイザー(知財)桑原 良弘 

 

 

※このコラムは2011年11月4日に配信されたメルマガ「広島校だより Vol.062」に掲載されたコラムです。メルマガ「広島校だより」を配信希望の方は、広島校だよりからお申込みください。