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第32回「ラムネとサイダー」

9月の執筆者は、チーフアドバイザー(技術)山本 茂之です。

「ラムネとサイダー」

 ラムネは夏の風物詩の一つです。今では街角で見かけることが少なくなりましたが、シニアの世代には、特に夏の暑い時期に昔を思い出させる懐かしい飲み物です。

 

 しかし、よくよく考えてみると、ラムネという言葉自体は珍しい。一体、何から付いた名前なの?

 

 ラムネはレモネード(lemonade)から転訛したもの。最初のle, mo, nadeをゆっくりと発音するとラムネと聞こえそうです。レモネード(lemonade、lemon ade)は、レモンの果汁に蜂蜜、シロップ、砂糖などで甘味をつけ、冷水で割ったエード(果汁を薄めて甘味料を加えた飲料水)ですが、もちろんラムネはレモネードとは思えず、これとは似ても似つかない違った飲み物という印象を受けるはずです(国によっては炭酸入りのレモネードもある)。

 

 ラムネは水に糖類、酸味料、香料(フレーバー)を入れてライムやレモン風味を出した甘い炭酸飲料で、独特な形状をしたビンに詰め込まれたものです。独特な形状になっているのは、炭酸ガスが抜けないようにビー玉でビンの中から栓をすることから来ています。大ざっぱに言えば、ラムネとはビー玉で栓をした炭酸飲料ということになります。

 

 ラムネの由来とされるレモネードはイギリスで生まれましたが、ラムネもまたイギリスからもたらされたもの。ラムネビンの原形は、1872年にイギリスでハイラム・コッド氏(Hiram Codd)によって炭酸飲料を密封する画期的な方法の容器として発明されたものです。

 

 一方、サイダーは国によって定義は様々のようですが、日本では甘味と酸味が付けられた(普通は柑橘類の香味がする)ノンアルコールの無色透明の炭酸飲料のことを言います。

 

 これに対して、イギリスのサイダー(cider)、フランスのシードル(cidre)はリンゴ酒(リンゴを発酵させて造られたアルコール飲料、発泡性のものが多い)です。アメリカ合衆国やカナダではciderは精製、熱加工していないリンゴ果汁(アルコール分を含まない果汁100%のジュース)です。

 

 ラムネは地ラムネとして中小業者により独占的に日本各地で製造販売されています。大手が参入しないのは、儲からないからということではなく、ラムネの製造が「中小企業の事業活動の機会の確保のための大企業者の事業活動の調整に関する法律」によって、豆腐、ビン入りコーヒー飲料とともに中小企業者しか製造出来ないように守られているためです。

 

 一方、サイダーは、キリンレモン、三ツ矢サイダー、スプライト、リボンシトロンなど大手の商品が目白押しです。地サイダーはこれらの全国規模で流通しているサイダーと違って、各地で中小の企業によって製造、販売されているサイダーです。懐古ブーム、町おこし等の目的で地域限定で販売されており、この点ではラムネ(地ラムネ)と同様です。

 

 ラムネの作り方(栓の仕方)を見てみましょう。まず、糖類、酸味料、香料を混ぜたシロップを口が上を向いた状態のラムネビンに注入します。次に炭酸水を一気に吹き込み、ビンの中の空気が抜けて炭酸水がビンに一杯になったら、ビンを逆さまにひっくり返します。そうするとビー玉がビンの口のところまで落ちてきて、内部の炭酸ガスの圧力でビー玉が口ゴムに押しつけられて栓をされた状態になり、これで完成です。ラムネビンにはビンの口から数cmのところにくびれが付いていて、ビー玉がビンの底まで落ちないようになっています。これはビンを逆さまにひっくり返した時に、ビー玉がすばやく口ゴムに押しつけられて、ガスが逃げるのを少なくするためです。

 

 一方、サイダーはどうでしょう。ビンタイプのサイダーで見てみましょう。最初にビンの中に炭酸ガスを吹き込みます。次に、シロップを含んだ炭酸水をビンにいれますが、ビンの中の炭酸ガスの圧力と炭酸水の圧力に差がないので、炭酸水はゆっくりとビンの中に入っていきます。一杯に充填されたところで、ビンの外側から王冠で栓をすれば出来上がりです。

 

 ラムネとサイダーともに、素材、味、見た目はほぼ同じ無色透明な炭酸飲料ですが、ラムネはビー玉でビンの内側から栓をされたもの、サイダーは王冠でビンの外側から栓をされたものということになります。

 

 元々のレモネードとサイダー(シードル)は明らかに異なる飲料ですが、それから進化した日本のラムネとサイダーは、中身は同じ、栓の仕方に違いがあるのみ、という結論になりますね。
 

 

チーフアドバイザー(技術) 山本 茂之
  

 

 

※このコラムは2011年9月7日に配信されたメルマガ「広島校だより Vol.060」に掲載されたコラムです。メルマガ「広島校だより」を配信希望の方は、広島校だよりからお申込みください。