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第30回「想定外の出来事」

7月の執筆者は、チーフアドバイザー(モノ作り)大村 卓一です。

「想定外の出来事」

 朝の通勤電車が目的地の2つ手前の駅に止まって、その駅の発車時刻を約5分過ぎたころ、「先ほど、**(地名)でトラックと電車の衝突事故が発生しました。発車時刻を過ぎていますが、前方の信号待ちをしています。信号が変わり次第発車します。」と言う車内放送がありました。それから5分くらい過ぎた時また、同じ放送がありました。「情報が入り次第連絡します」と言う言葉が加わっていましたが、皆さん時間に余裕を持って通勤されていたのでしょうか、まだ誰も動きません。

 

 『この前』と同じだと直感しました。『この前』は3ヶ月くらい前の帰宅電車でした。その駅で1時間くらい同じような放送を聴きながら、代替手段もないので、疲労という自己決済できる不都合を冷静に受け止めその状況を受け入れていました。1時間の遅れというのは一気に解消されるものではなく、下車するまでの各駅で待ち時間が加算され、目的地に着くまでにはさらに30分くらいの遅れが加算されました。このときは8駅向こうの駅構内の事故でした。そんな経験が頭をよぎり、まだ余裕はあったのですが、状況はどんどん悪化してゆくはずと思い、そんなに急いでいるわけではなかった優柔不断な私はその駅の発車時刻を12〜13分過ぎたころ、混雑した車内に「ごめんなさい(降りますので通路を空けてください)」と言いながら、社外に出て代替交通機関に向かいました。後から反省すると、このとき私が事務所に付く時間が1.5時間遅れるとどんな不具合が発生するのかをしっかり考えず、遅れるという危機感を自分の頭の中に勝手に作り上げていました。改札を出る頃、2車線隔てて止まっていた電車のドアが閉まり、乗ってきた電車は出てゆきました。しかし、「次の駅で更に遅れ時間は増えるはず」と自分に言い聞かせながら、別の交通
機関への乗り継ぎをし、結局いつもより20分くらい遅れて事務所に到着しました。始業時間の前だったので、全く不具合は発生しませんでした。

 

 想定外の出来事と言っても大小さまざまです。上に述べた事例は日常茶飯事と言うと語弊がありますが、小さな出来事。しかし、こうした小さな想定外も『経験したことのない想定外』も本質的なところでは相通じるものがあるのだろうと思います。

 

 そもそも想定外とはどんなことなのでしょうか?

 

 『これまでに経験したことのない速さで行動しなければ危機に陥る事態が突然出現する』と言う仮説にしてみました。想定外に遭遇したときの行動は前進・後退・迂回、自前処理・応援要請、・・・ということになりますが、選択肢が極めて少ない。最大の危機は覚悟していない死・命の次に大切なもの/人を失うこと、ということになります。短時間での状況を判断し、俊敏に行動しなければなりません。初動に結果は大きく依存します。

 

 紹介した私の経験を、このストーリーに沿って対比しようとしているのですが、かなりのギャップがあることを承知の上で整理してみます。キーワードは以下の3点で、1.想定値はどれだけずれる→電車は目的地に約*分遅れる
2.失うものあるいはお客様の被害の大きさは?→A様と**を決める予定だった3.その不都合を最小にするためにどうする?→代替交通普段に乗り換え約束を守ろうと考え・行動しました。行動の判断基準はお客様(あるいは一番大切なもの)ということにすると収まりやすいことを認識しました。

 

 『電車が遅れる』と言う日常茶飯事的な想定外でも海外で遭遇したら、私はパニックに陥るはず。上述の1〜3を判断するための情報収集手段(言葉)や地理やその土地の仕組みなどの基礎知識が全くないから、と考えていました。そうすると想定外に遭遇したら危機が最大化してゆくのを無抵抗に受け入れるのです。惨めな姿は晒したくない。どうしたら対応できるようになるのか?

 

 私が思い至った結論は、『海外にいるとき私はどなたかのお客様であるはず。その人は必ずお客様である私の被害を最小限にしようと親身になってくれるはず。その人との信頼関係を日ごろから作り上げておく』こと。仏教の教えに『愚人思わくは利他を先とせば自らが利省かれぬべしと、然には非ざるなり、利行は一法なり、普く自他を利するなり』という言葉があります。お客様にとって良いことは自分にとっても良いことですという教えと理解しています。逆も真のはず。

 

 想定外への対応について考えてきました。一番大切なもの・人が受ける不具合を最小化することを念じて行動を起こすというのが私の結論と申し上げました。そのためには改めて一番大切な人・ものをしっかり絞り込んでゆくことだと思います。不要なもので溢れている我が身の反省も込めた私の実感です。

 

 

チーフアドバイザー(モノ作り) 大村 卓一
  

 

 

※このコラムは2011年7月6日に配信されたメルマガ「広島校だより Vol.057」に掲載されたコラムです。メルマガ「広島校だより」を配信希望の方は、広島校だよりからお申込みください。