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第29回「カスとガス」

6月の執筆者は、チーフアドバイザー(技術)山本 茂之です。

「カスとガス」

 朝は出来るだけ早く起きるようにしています。「早起きは三文の徳」は先人の教えですが、「徳」の内容は人様々。私の場合は何と言っても、出すべきモノを出すことです。起きてから直ぐに日頃とは違った行動を起こすと、体のリズムが崩れてしまい、一日中不愉快な気分で過ごさないといけなくなってしまいます。朝起きてから1時間以内にスッキリ爽快が一日の活動の源泉です。早起きは、その自然のリズムを保つための、ゆとりの時間を確保するためです。

 

 人は1日平均100〜250gを糞便(大便)として排泄すると言われています。平均寿命80年として、推して知るべし、一生で10トン近くを排泄することになります。

 

 大便は、「口から取り入れた食べ物が体内で消化しきれなかったカスである」と思われがちなのですが、実はそうではありません。大便のうち、食べ物のカス(残滓)はわずか5%程度に過ぎません。カスの内容は、水分が半分以上の60%程度、新陳代謝によって剥がれた腸壁細胞の死骸が20%程度、大腸菌などの腸内細菌の死骸が15%程度と続き、食べ物のカスは5%程度と、まさに少数派に過ぎません。

 

 食べ物の消化吸収は小腸上部で行われます。そこで消化吸収されなかった食べ物のカスは、次の経路である小腸の下部や大腸で腸内細菌の作用によって分解(発酵)される時に、ガスを発生させます。ガスの正体は何。臭ってきそうなので、ここでは止めましょう。このカスから生じたガスのほとんどは腸管から吸収されますが、吸収しきれないものが食べ物の摂取時に飲み込まれた空気由来のガスと混じって肛門から排出されます。これがいわゆるオナラ。

 

 便秘で腸内に便が長く滞留すると腸管からガスが多く吸収され、血管を通して肺〜口腔から口臭として放出されるので、残便感やお腹の張りなどに加えて、他人にとっても迷惑な更なる不快感が生じることになります。一方、小便(尿)は腎臓により血液から濾し取られて作られたもので、血液中の水分や老廃物から成っています。人の尿の場合、水分98%程度、タンパク質の代謝で生じた尿素2%程度から成っています。その他に、極微量の不要物が含まれています。1日に約1.5リットル程度排泄され、平均寿命80年で約35トン程度を排泄すると言われています。

 

 人がタンパク質などから体内に取り入れた窒素のうち、過剰分が尿の中に尿素の形で排泄されます。保湿クリームにも使われている、あの尿素です。成人では尿素を 1日 30 g 程度排泄します。最も簡単な窒素化合物はアンモニアですが、人体には有害なため、肝臓により安全な尿素に変換されて蓄えられ、水溶液(尿)として排泄されるのです。

 

 尿素は水溶性なので水と共に捨てなければならず、濃縮にも一定のエネルギーが必要なので、水の確保が重要な問題となる陸上生活では尿酸にしたほうが有利です。窒素の排泄は、哺乳類や両生類では上記のように尿素の形で排泄されますが、鳥類や爬虫類では尿酸の形で行われます。これは、尿酸は尿素に比べ濃縮が可能であり、体内に一時的に保持する時に水分をあまり必要としないためだと考えられています。また、硬い殻を持つ卵から生まれることで、発生に伴って生じた窒素化合物を体外へ排出することが出来ないためとも考えられています。尿酸は非水溶性であるため、鳥類や爬虫類の糞に見られる白い部分は、実は糞ではなく尿なのです。

 

 一方、魚類ではアンモニアの形で排泄されます。アンモニアは水に溶けやすいので、水中で生きているのには便利で、尿(アンモニア)は垂れ流しにしている訳です。同じ魚でありながら、鮫やエイはアンモニアと尿酸の中間化合物である尿素を作って、しかもこれを尿として捨ててしまわず、血液の中に混ぜています。腐りかけた、または死んだ直後のサメがアンモニア臭いのはそのせいです。サメの刺身を食する習慣のある広島県北部の人なら、これは実体験として分かる話ですね。陸に上がった爬虫類や鳥類は尿の垂れ流しでは生活に困るので、無毒で水に溶けない尿酸にして膀胱に蓄え、時々体外に排泄するプロセスを取るに至ったと考えられています。

 

 排泄直後の人の尿は基本的には無菌で、時間が経つと尿素が外部からの細菌によってアンモニアに分解され、臭いを放つようになります。始めからアンモニア臭い訳ではありません。

 

 尿は血液中の新陳代謝の老廃物、不要物、有害物を体外へ輩出するために腎臓で濾過されて出来ることは既にお話ししたとおりです。言ってみれば、尿はやはりカスなのですが、一方で尿検査は、タンパク尿、糖尿、細菌が混入した尿など、身体状態を反映する重要な検査指標として使われています。この他に、尿検査は特有のホルモンが含まれているかどうかの妊娠検査、スポーツでのドーピング検査など、重要な役割を果たしています。

 

 酒カスは日本酒などのもろみを圧縮した後に残る白色の固形物ですが、甘酒にすれば実に美味。焼いて食べても、十分にお菓子になります。また、酒カスを床にする奈良漬けは、1,300年以上前から今も存在する日本固有の漬物です。瓜、胡瓜、西瓜、人参、大根などを、異なった風味で食することが出来る、まさに日本の食財産です。酒カスの成分は、水分51%・炭水化物23%・タンパク質13%・脂質・灰分と日本食品標準成分表には記載されています。何やらに、似て非なり、です。

 

 カス(粕)汁2杯を食べた教師が酒気帯び運転で送検された例もあります。アルコール度5%の奈良漬けだと、約60切れ(400g)食べなければ酒気帯びの基準値に達しないと言われています。検問で「奈良漬けを食べた」と言っても、言い逃れは出来ません。余談ですが、今の世の中、酒酔い運転の検問で、持参したアルコール飲料を警察官が見ている前で飲んで、「今飲んだから酒に酔っているのであって、運転していたときは酒酔いではない」と言い逃れをしようとする、とんでもない不逞の輩も出てきているご時世です。

 

 くれぐれも、食べ過ぎてカスを作り、ガスを出さないように、また飲み過ぎて酒酔い運転で捕まらないように(飲んだら乗らない)、食べ過ぎ、飲み過ぎに注意を払わなければいけませんね。

 

チーフアドバイザー(技術) 山本 茂之
  

 

 

※このコラムは2011年6月1日に配信されたメルマガ「広島校だより Vol.056」に掲載されたコラムです。メルマガ「広島校だより」を配信希望の方は、広島校だよりからお申込みください。