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第25回「知的資産経営と支援」

2月の執筆者は、チーフアドバイザー(知財)桑原 良弘です。

「知的資産経営と支援」

 中小機構の事業のうち知的財産に関する支援には次のような事業がある。

■知的財産の戦略的活用支援

■知的資産経営の支援

 他にも多くの支援事業があるが、実に知的という文字をつけた事業は2つもある。それだけ中小企業にとっても重視すべき課題であり、支援強化を図るよう検討されたということでしょう。しかしながらその支援は非常に多岐にわたる検討が必要で、弁理士・弁護士はもちろんのこと、経営戦略・技術開発・事業開発・ナレッジマネジメントといったビジネスの視点も重要であり、これらの知見を統合することで課題の解決へと進めると考えられます。そしてその知見を統括して適切な支援を図るためのプロデューサーが必要です。

 さてここで、「知的資産」とはどのようなものか。中小機構のパンフレットによれば「企業等の競争力の源泉としての、人材、技術、技能、知的財産(特許・ブランド等)、組織力、顧客とのネットワークなど、財務諸表には現れてこない資産の総称」としています。知的財産戦略のうち権利化に注目して考えてみると、人材は知的資産を創出する源泉で、そこから湧き上がるアイデアを評価し権利化し活用して適正に還元しなくては育たないでしょう。技術は自ら開発したのに誰もが使えるならば、次の開発にはつながらないでしょう。技能は人財育成と技術開発への期待があるからこそどの業務にわたっても磨かれるものです。知的財産(特許・ブランド等)はこのような無形なものを権利としておさえるためのツールです。組織力は知的資産そのものを会社にいるすべての人が効果的に活用し、収益を上げるための体制です。顧客とのネットワークは単なる売り買いだけでなく、最適な関係であるために自社ブランド(商標権)を守り、知的財産権によって模倣品の氾濫を抑えて品質が守られてこそ構築されます。ざっと考えても知的資産と権利化を鑑みた知的財産戦略はすべてつながっているのです。知的資産はビジネスに直結していることがわかります。

 知的資産を確立するためなんだから開発技術はすべてを権利化するべきだ、とは考えていません。例えばノウハウとして秘密裏にしておきたいことやレシピなど門外不出のものもあります。特許も実用新案も権利期間が定められています。特許出願をするならば、そのタイミングを考えたり、これからの事業戦略の中でどう有効に働かせるか、特に中小企業においてはお金のかかる申請をそうそうたくさんはできないでしょう。だから、一定のマーケティングと市場動向、技術動向をある程度見極め、さらに現在の開発状況とこれからの開発計画を鑑みて出願することが重要といえます。サービスを提供する企業においては自社のビジネスモデル開発を考え、モノづくり企業にとっては次の製品開発を考える。事業戦略の中ではおのずと知財戦略のことを考えなくては成り立たないのです。実はここまで整理したのちに、必要な開発のみ費用をかけて研究開発するほうが結果的に開発スピードをあげられ、早い段階で他社の有力な技術や事業を協同・連携・連動させられいち早く市場へ投入できるのです。

 「会社の強み(知的資産)をしっかりと把握し、それを活用することで業績の向上に結びつけること」を「知的資産経営」といっています。知的資産に関わる支援では技術開発だけでなく、事業を見据えて企業の知恵の創造と保護を絶えず図り、その活用とビジネス展開を考えた支援が必要です。

 知財にかかる支援は、中小機構においては多くの専門家を複合的に展開し、地域企業への高度かつタイムリーな支援が図れるようにしたいものです。知財担当CADとしてはプロデューサーとして地域企業のお役に立ちたいと存じます。
 

チーフアドバイザー(知財) 桑原 良弘