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第24回「はやぶさの成功に学ぶこと」

1月の執筆者は、チーフアドバイザー(モノ作り) 大村 卓一です。

「はやぶさの成功に学ぶこと」

 小惑星のサンプル採取・帰還は今年の筆頭格のニュースでした。
 はやぶさが持ち帰った試料の分析結果を新聞発表した数日後、JAXAはやぶさプロジェクトマネジャー・川口さんは講演会で「(カプセル内で見つかった)かんらん石や輝石がイトカワ起源の地球外の物質と確認されました。太陽系や地球の起源を説く手がかりになる画期的な成果です」と自己評価された。その公演を聴いてそのファンになり、はやぶさの軌跡をNET情報で追ってみました。
2003年5月9日 打ち上げ
2005年9月4,10日 イトカワの自転周期、細長い形状を確認。
2005年9月12日 イトカワから20Kmの位置で静止。
2005年11月4日 着陸リハーサル開始。
2005年11月20日 ターゲットマーカー分離 約30分着陸後離陸。
 ・・・・・マーカーはイトカワ表面に設けようとした基準点で、はやぶさはこのマーカーを利用して着地する場所、速度、姿勢などの条件を自己制御する。関係者88万人の署名あり。
2005年11月26日 記録モニターによる制御で1秒間着陸後離陸。
2006年3月6日 位置確認 イトカワから1.3万Km、地球から3.3億Km。
2007年4月25日 地球への帰還運転始動。
2010年6月13日 カプセル回収。
 ランデブー状態に入ってから小惑星のサンプルを入手するまでのプロセスは、1.遠くからイトカワの状態を俯瞰し、2.近くから着地点を見定めはやぶさのこの自転での技量を見極めた上で行ったシミュレーションを盛り込んだリハーサルなどで動作を診断し、3.はやぶさの着地を誘導しつつ見届ける、と言う3つのステップに分解できます。第1.ステップはターゲットマーカーを打ち込むまでの2ヶ月間、第2.ステップはリハーサルの期間約2週間、第3.ステップは2日ということになります。準備に十分時間をかけていることがよく分る。かつ、ターゲットマーカー制御法を不採用とした点は直前の実験の意味を重視しフレキシブルに対応されたもの。
 イトカワについてからカプセルが体験に突入するまでに度重なるトラブルに見舞われたと話されていましたが、私は、多くは地球でトラブルシュートのシミュレーションが行われマスコミ報道よりも冷静に対応されたのではないかと推察しています。わが身を振り返ってみると、事前の準備の不徹底に思い至る。多くの分野でアウトプットの質が貧弱であった/あることを納得した次第です。
 更に、この仕事の成果は多くの日本人に夢を与えてくれました。電波が届くまでに数十分も掛かる天体から帰還したカプセルや、回収した石を私は見てみたい。1970年の大阪万国博覧会では3時間待ちの行列も経験し月の石を見ましたから。宇宙の成り立ち解明を促進すると言う純粋にアカデミックな関心だけでなく、イトカワの石から希少元素などが見つかったら、見たいという人はたくさん出てくるはずです。「イトカワにイオンエンジンを沢山取付けて地球の衛星にしよう」などとよこしまな空想を描く人もいるのではないでしょうか。
 はやぶさ事業は事に当たるとき目的を明確にした上でまず(広い視野で全体を)観ること、その上で(行動することを前提にして本質をしっかり)診ること、そして果敢に実行する(看る)ことによって目的を達成するプロセスを実践で示し、多くの関係者や周囲の人たちに(夢を)見させてくれました。
                        
参考資料
毎日新聞 2010年12月14日朝刊 特集記事
はやぶさ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%AF%E3%82%84%E3%81%B6%E3%81%95_(%E6%8E%A2%E6%9F%BB%E6%A9%9F)(新規ウィンドウに表示)

イトカワ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%88%E3%82%AB%E3%83%AF_(%E5%B0%8F%E6%83%91%E6%98%9F)(新規ウィンドウに表示) 

 

モノ作り支援チーフアドバイザー 大村 卓一