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第23回「太陽と五円玉」

12月の執筆者は、チーフアドバイザー(技術) 山本 茂之です。

「太陽と五円玉」

 五円玉(五円硬貨)の中央に開いている孔は直径5mmです。この五円玉の両端を指で挟んで持って、腕を自然に前方に伸ばして(54cm前方)太陽を見ると、丁度太陽がこの孔にスッポリと入ることがわかります。ただし、真っ昼間に太陽を直接見ると失明の危険がありますから、必ず日食ガラスなどの専用の道具を使って見ないといけません。

 スッポリと入るということは、硬貨の孔の視角と太陽の視角が同じということです。視角は物体の両端から目までの二直線が作る角度のことです。目に見える物体の大小はこの角度の大小によるものです。でも、五円玉の孔と太陽が同じ大きさだとは、もちろん誰も思わないですね。

 五円玉を54cm離して見たときの孔の視角は、tanθ=(5/2)/540=0.004629 を満足するθの2倍、2θ=0.530°です。

 一方、地球から太陽までの距離は149,597,870kmです。太陽の直径は1,392,000kmなので、太陽の視角は、sinθ=(1,392,000/2)/149,597,870=0.00465247を満足するθの2倍、2θ=0.533°です。ピッタリ入ることが計算で確認できます。

 因みに、月の場合はどうでしょう。地球から月までの距離は平均384,400kmです。月の直径は3,474kmなので、月の視角は、sinθ=(3,474/2)/384,400=0.0045187を満足するθの2倍、2θ=0.518°です。したがって、月の視角は太陽の視角とほぼ同じ、またはほんの少し小さいということになります。要するに、見た目は同じ大きさに見えるが、よく見るとわずかに月が小さく見えるということになります。

 太陽が山や地平線に沈み始めてから完全に沈みきるには、言い換えると地球から見て太陽が直径一つ分動くのに要するのにどれくらいの時間がかかるのでしょうか。

 地球は24時間で1回転(自転)する、すなわち24時間で360°回転するので、上記の0.533°≒ 0.5°が何時間に相当するかを求めればよいことになります。太陽が直径一つ分動くのに要する時間tは、t=24×60×0.5/360=2 から、2分であることがわかります。端数があるので、実際はこれよりも若干長いのですが、2分と覚えておいて何ら支障ありません。

 「秋の日はツルベ落とし」とは先人が残した言葉です。上水道が整備された時代に育った今の若者は、ツルベと言っても何のことかわからないようですが・・・。上記のように、太陽が直径一つ分動くのに要する時間は2分です。秋だからと言って太陽が速く動く訳ではないのにもかかわらず、先人は何故このような言葉を残したのでしょうか。

 2010年の広島市の日の入りは、夏至一週間後の7月1日から7月8日の一週間で、19時27分から19時26分へと、わずか1分しか早まりません。一方、秋真っ盛りの10月1日から10月8日の一週間では、日の入りは17時55分から17時46分へと、9分も早まっています。夏と秋を比べると、秋は日の入りの時刻が日に日に早まり、その「早まり方」も1年で一番「速い」ので、ツルベが落ちていくような感覚になってしまうというのが実態のようです。

 因みに、秋終盤の11月1日から11月8日の一週間では、日の入りは17時18分から17時11分へと、7分しか早まりません。また、冬の初めの12月1日から12月8日の一週間では、日の入りはいずれも17時00分と全く同時刻で変化がありません。「秋の日はツルベ落とし」を感じるのは、9月初旬〜10月中旬の時期ということになります。

 ところで、五円玉には農業、水産業、林業、工業に関するモチーフが描かれています。それぞれ、稲穂、水面、双葉、歯車です。多分、皆さん、そんなものがあったかな、というのが実感では。

 現在発行されている硬貨の中で、500円硬貨(ニッケル黄銅)、100円硬貨(白銅)、50円硬貨(白銅)、10円硬貨(青銅)、1円硬貨(純アルミニウム)はいずれも額面表記がアラビア数字でなされていますが、唯一五円硬貨はアラビア数字ではなく漢数字表記になっています。これで戸惑う非漢字圏の外国人も多い。

 五円玉は消費税導入で必要性は増しましたが、日本人にとっては紛失してもあまり気にならない硬貨で存在感が薄い。一方で、中央に孔が開き、また黄銅で出来た金色の貨幣は世界的に珍しく、特に外国人にはその意味で存在感があるようです。

 太陽を見るのに使うだけでなく、五円玉そのものをじっくり見て頂きたいと思います。

 

チーフアドバイザー(技術)山本茂之